個人山行 南八ヶ岳 硫黄岳

今泉 S・R

…今年、どーしても雪山に行きたい!真っ白に輝く山の姿が見たい。見たいけど…TVでも、本でもなくこの目で見たーい(^O^)/ということが始まりなのです。
雪山経験が浅い(無いに等しい。笑)夫婦二人でどこに行こうか、二人で毎日雪山を猛探索する。
北アルプス西穂独標(穂高というだけですでにビビる)、中央アルプス木曽駒ヶ岳(雪崩は大丈夫かな…)、八ヶ岳、谷川岳(死…死の山?)など、行ってみたいところがたくさん出てくる。
三田会長や峯さん達に詳しくどういう山なのか教えて頂き、夫婦二人会議を繰り返しやっとのこさ決定する。 ジャジャーン!
今回は厳冬期入門とも言われる南八ヶ岳の硫黄岳に決めたのでアール!(^^)! 
ルートは、美濃戸口~赤岳鉱泉~硫黄岳のピストン。滑落や雪崩の危険性が低い、山小屋(赤岳鉱泉)が冬季も営業していて余裕を持ったコースタイムが設定できる、晴天率が比較的高い、登山口まで公共交通機関でアクセスしやすいことが決め手だ。
本当の本当は赤岳まで行って立ってみたい。でも、どうしても山頂にたてるイメージが浮かばない…ということは行かない方が賢明であります。
手続きが大得意な主人が往復の列車、初日の宿、赤岳鉱泉の予約を済ませ、装備の準備にとりかかる。この準備がものすごく長―い主人。
必要な装備を選びながらパッキングする作業はワクワクする。この心がソワソワする感覚が大人になっても続いている事が本当にうれしく思う。
ザックの重量は約13kg。あとは天気のみ。んー、2月の天気は変わりやすいらしい。4日しかない休暇・・そして許された山行は2日、2日しかないチャンス!
毎日のように予報がコロコロ変わって、私たちの情緒もコロコロ変わる。(笑)やっぱし、大きな山行になると天候が気になり仕事に手がつかない。これは私だけなのだろうか?笑 なんとか天気がもつみたいで予定通りの日程で八ヶ岳に行くことに。レッツゴーだ ^^) みなみ
2/8(土)6:19諫早駅を出発。
博多で新幹線に乗り換え、名古屋、塩尻で特急に乗り換えながら茅野駅に到着。長崎を離れ、大好きなアルプスに近づくにつれ心のドキドキ・ソワソワする感覚が止まない。
遠距離恋愛中のやっと会えるーっ!今日の服やメイクどうかな?といった乙女気持ちのよう!田尻ご夫妻から借りたピッケルを持って、大型ザックと冬靴の格好に、周囲から視線が集まる。
重装備でピッケルを持っている自分に少しだけ惚れて、今日雪山に行ける自分が少しだけ誇らしくなぜか感動する…( ;∀;)
この時の新型コロナウイルスの感染者は全国で20名程度だったため、公共交通機関の乗客はそれなりに多かった気がする。
茅野駅からは、路線バスで美濃戸口まで行く。バスの中はガラガラ~。
青空の中、バスの大きなフロントガラスから覗く八ヶ岳様…お目にかかれて光栄です。今日より3日間どうぞお相手お願いします(/ω\)
駐車場は満杯近く、ベテランさんがたくさんいらっしゃるのかな~と緊張…。暖冬のせいか美濃戸口には雪がほとんどない。ちょっとガッカリ…。長崎は雪がないのでこちらの県は雪かきしているのかな?と内心すごくワクワクしていたので残念だ(*_*; 
この日は、キャンセル待ちしてようやく予約できた yatsugatake J&N に宿泊。
レストランに山小屋風の宿泊施設がある店。そう、今流行りの・・・映える宿!
この宿のステーキが私たちの欲望を誘惑してくるが、ここは歯を食いしばり、目を瞑り、心を静めて我慢する。なぜなら…赤岳鉱泉でステーキが出ると信じてるからだー☆
そして、二人はカレーとビーフシチューにする。それがまた、めちゃくちゃ美味しい。お肉が噛まなくていい程。ぜひ皆様に食べて頂きたいのです(;;)
お店の人も優しく料理もおいしかったので満足だ。こんなに山の人を労り、ほんわかする気持ちになる山小屋は初めてだ(^^)笑顔が素敵なオーナーでした。
2/9(日)5:46 いよいよです。私たち2人の雪山初挑戦、開幕です!
美濃戸口を出発、天気は晴れ。気温はマイナス5℃くらい。しばらく緩やかな道を進むが、なぜだか2人とも体が重くペースが上がらない。不要な荷物は宿に置かせてもらって、いくらか軽くしたのに。
わたしは久しぶりの山行だからなのか…。そして主人は飲み会と残業続きだったからだろうか・・。とにかくゆっくりゆっくりスローに進むことにした。
美濃戸山荘を過ぎてから徐々に雪がつもっている。大好きな雪がこんなに…もうテンションは最上階レベルです。
歩くとサクッザクと音を出していた雪が、いつの間にかムギュムギュと音が鳴りさらさらの雪に変わっていた。雪道をルンルン気分で歩く。(気持ちはルンルンだが、体力はルンルンにならなかった。笑)
数十個の橋を渡り、川が赤くなっていたので、もうそろそろかもしれん!と期待をしながら…まだかなーまだかなー、お腹すいてきたなーと思っていた目の前に雪山のオアシス出現。
9:39に赤岳鉱泉に到着。おっきなおーきな岩壁が見え圧倒される。また、アイスキャンディでのクライミングは大盛況だ。
小腹も減りしばらく休憩。
私たちは山で食べる塩っけのあるスナック菓子にハマっており、ここでもポテチを食す。…んぅっっまぁ~!物の数秒で間食!膨張するけどポテチ持ってきて本当に良かった。心にしみる。
山の中では、当たり前の事やちっぽけなことで心がすごく揺れるから好きだ。
この辺で休憩にお別れをし、硫黄岳さんに挑戦しに行かなければいけない。さぁ、戦闘態勢にはいりますぞ。
アイゼンを装着!ストックからピッケルに替えて10:46に赤岳鉱泉を決死の思いで後にする。そして目指すは硫黄岳だけ~(笑)
久々のアイゼンの重みと急登箇所でのキックステップに苦しむ主人と12本アイゼン初の私はその重さに一歩目より心が弱っちになった。2人にとってH31.2.9の鳥取伯耆大山例会以来の冬山である。
あんまり樹氷はなくシャッターチャンス無し。緩やかな登りなのに足が上がらない…めちゃくちゃ重く感じ本当に前に進まない。
幸いに雪に埋もれ脱出するという体力は使わなくてよかったので救われた。樹林帯では踏み後の横はあまり積雪がないのでストックの方が安定したかもしれない(>_<)
指先を動かしていないとすぐ冷たくなってしまうので歩きながら指も動かす。歩き方も考えながら、指先も動かしながらって・・・結構な集中力が必須でした ^^)
やっとこさ樹林帯を抜けて12:58に赤岩の頭下に到着。
右側にチラッチラッと赤岳さん達が覗いて来るが山頂でお会いしたい為、見てしまいたい気持ちをグググッと堪え正面しか見ない。そしてもう、目の前にはもう山頂が見える。
ここから先は稜線だ。…硫黄岳から降りてきた人から風がすごく強かったから気をつけてとアドバイスをもらう。おぉ~…怖い。肌が露出しないように出来る限りで防寒防風対策をしっかりして、いざ硫黄岳へ。
稜線に出ると、やはり風が強い。ヒュ~とかビュ~とかの風じゃなく、ゴオォオォ~という風。…(+o+)
なぜ故ここは台風な領域なのかわからぬぬぬ…。温度計はマイナス15℃。
バラクラバをしてないと顔が凍てつきそうだが、そのせいで呼吸がつらい。なんだろう・・・呼吸するけどなっかなか酸素が体の全部に行き渡っていない感覚。もう過呼吸になってしまうではないか!いや、なっとったはず( ゚Д゚)
サングラスも曇って視界不良。はぁーはぁー…苦しいけど息を整えて。シャックシャック…前に進まない重い足にこれまでの想いをのせて。―――存在が半分消えてなくなるんじゃないかという死にもの狂いの思いで13:58に硫黄岳山頂(標高2,760m)に着地。勝ったー!  …やっばい。
目の前には赤岳さんや阿弥陀岳さん等のそびえ立つ山!山!青い空、白い雪、かっこよすぎる岩肌・・・この季節で最強なタイミングでの、すんっばらしい景色が二人を抱きしめてくれて、もう感激。
寒くなければずっとここにいたいと思えるくらい。でも寒い…本当に寒し!その絶景をいつまでも忘れないために、シャッター越しではなく自分の目に焼き付ける。
でもやっぱり形としても残しておきたいなぁ~♪と撮影タイム。
(このために私は総重量約2kgのカメラを準備。大出費―。)
操作のため、薄手の手袋をしていたが、ダメだー指先がどんどん痛くなってくる。足先も痛くなってきたー。やられてしまう…(; ・`д・´)
どんどん体が冷えてくる。い、いかん!!!『そして、いつの間にかニット帽がなくなっている。(サングラスやバラクラバを調整していた時に飛んでいってしまったのだろか・・・。主人反省)』
これ以上は危機感を覚えたので(おそるべき八ヶ岳)、今日宿泊する赤岳鉱泉へと退散。
『途中、尻シェードしていると、木に足がぶつかって、片方の足にアイゼンが引っかかってゲイターが破れてしまった。(生地が厚くても金属の爪には負けてしまう。)
ふくらはぎに爪が刺さって痛い。尻シェードするには急だったかもしれない・・・。』(主人またも反省)
16:10赤岳鉱泉到着。小屋の中は登山とアイスクライミング客でいっぱいだ。テント泊も多い。
到着時刻が遅かったので夕食は19時からになったので、夕日見にいこっかぁ~♪軽いノリでいってみるとなんとや!!
夕暮れ時のアーベントロートタイム。
大同心が赤く染まり、木々の暗闇がいい感じだ。
今日の山行を最後まで素晴らしいものにしてもらえて本当にありがたいと、大同心さんにお礼を言う。
真っ暗になるまで見とれてしまい、気が付いたら…さあ、待ちに待った夕飯時?赤岳鉱泉の有名ステーキが食べれるぞと期待したが、なんと今日は「ほっけ」え、え……チーン。
ステーキは昨日のメニューとのことで、連泊する人が飽きないようにメニューは替えているそうだって。『チェ…なんて登山客に優しんだ。でも…でもステーキ食べたかったー(;_;)』
ホッケも餃子鍋も本当においしかったので大満足。結果よければすべてよし!
今日の山行を二人であーだった、こうだったとおしゃべりしながら、久々のまったりした夜の山小屋の雰囲気を楽しむ。
今回は個室(コロナ関係がありますので、今回だけは許してください。笑)
21時に暖房が消され、一気に冷え込んできたので寝るしかない。
今日ふと考えた。人は寒くなると本当に眠たくなるのだろうか?(; ・`д・´)そのまま永遠の眠りとなってしまうのだろうか…。
↓ここからは主人にバトンタッチしまーす。
2/10(日) 5:00起床。布団から出ると体が一気に冷えてびっくり。温度計を見ると部屋の中はマイナス10℃。梨沙は寒くて何度も起きたようだ。もちろん机に置いた水は凍っている・・・。山小屋だと思って平地の感覚でいてしまった。(反省)
今日は、中山尾根展望台に行って美濃戸口まで下山する行程。
7:38赤岳鉱泉出発。8:25中山尾根展望台到着。赤岳、阿弥陀岳の眺めがすごい。
近くで見ると険しさがより一層鮮明になる。そして撮影タイム!
午後からは、天候が崩れる予報で、小雪が降る中、速足で下山。
途中、凍った砂利道の下りで盛大にこけてお尻を強打。すごく恥ずかしい。チェーンスパイクを持ってきてたのに・・。反省点ばかりである。
11:46美濃戸口に到着。一昨日泊まったyatsugatake J&Nのお風呂に入って、レストランにて食べ損ねたステーキを食べる。あーおいしかった。
茅野駅までのバスは、冬季シーズンは土日祝日のみ運行なので、もったいないがタクシーとなる。
運よく、赤岳から一気に降りてきた学生時代登山部のおじさんから相乗りさせてほしいとお願いされ、快諾。長崎から来たことを話すと、半額負担してくれた。ありがたい。それにしても、すごいおじさんだ。
15:16茅野駅を出発。23:41諫早駅到着。
きつくて寒くて苦しくて、もう厳冬期は行きたくないと思ってしまっても、下山するときには、また行きたいと思ってしまう。私たち夫婦は登山病み付き症候群だ。(笑)
三田会長をはじめ、相談にのってくださった皆様ありがとうございました。
【※参考までに】
今回利用した天気情報サイト(有料)
→「山の天気予報」
 山専門の天気予報会社である(株)ヤマテンが提供するサービスで、翌々日の天気予報や大荒れ情報、気象予報士のコメントを発表しています。メール配信ありです。
コースタイム:
2/9(日)美濃戸口5:46~9:39赤岳鉱泉10:46~13:58硫黄岳14:10~16:10赤岳鉱泉
2/10(月)赤岳鉱泉7:38~8:25中山尾根展望台8:49~赤岳鉱泉9:12~11:46美濃戸口