個人山行 2017年夏 北ア 槍ヶ岳

平田 T・S

昨年穂高岳で北アルプスの魅力の一端に触れ病みつきとなり、今年は槍ヶ岳を夫婦で目指すことにした。
9月8日9時に上高地を出発。楽しみにしていた河童橋からの穂高岳-吊尾根の眺望はあいにくの曇り空で拝めなかったが、さわやかな水辺の遊歩道は何回来てもいいものだ。
横尾で昼食をとった後、少しずつ勾配を増して行く山道を槍の穂先はまだかと思案しながら歩いていると、やがて1泊目の山小屋である槍沢ロッジに到着する。
ここは槍沢からの豊富な水があり入浴可で暖かいお湯につかり疲れを癒す。
9日は快晴。わずかに顔を出した槍の穂先を小屋のヘリポートから拝んで出発する。
心地よい沢のせせらぎを聴きながらババ平を過ぎ大曲まで軽快に歩く。
ここから水俣乗越までは急な登り道を覚悟していたが、傾斜が大きい所はジグザグに道がつけてあり、思ったより登りやすく予定より早く水俣乗越に到着。
ここで10時に蝶ヶ岳―大天井岳を経由してきた田尻夫妻と合流予定であったが、早く着き過ぎたため携帯電話で連絡し、先に東鎌尾根を登ることにした。
ここから槍の肩まで梯子や鎖場の多い岩尾根の登りになる。岩山のピークを巻いて長い梯子を降り、再び岩道を登り続けると、開けたいわゆる槍の展望台と呼ばれる高台に辿り着く。
ここからは槍ヶ岳を正面に右方に連なる灰白色の荒い北鎌尾根の稜線が紺碧の空を背景に見渡せる。
その右奥には針ノ木岳、高瀬ダム湖の湖面が見える。さっそく記念写真を撮っていると田尻さんから電話がかかってきて、ヒュッテ西岳の広場からこちらが見えるとのことで大きく手を振って答える。
相棒(平田S)のペースに合わせてゆっくり登っていたら、ほどなく田尻夫妻が追いついてきて合流する。
歩行ペースが違うため二手に分かれ、相棒は田尻Hさんにまかせ、私と田尻Sさんは雲が涌く前に槍ヶ岳登頂を済ませようと先を歩くことにする。
快調なペースでヒュッテ大槍を過ぎ槍ヶ岳山荘のある槍の肩に到着。
ザックを置いてさっそく目の前に聳える槍を登る。
遠くから見るとあの険しい傾斜のどこを登るのかと不思議であったが、ルートには鎖、梯子が整備され、滑りやすい岩には杭が打たれており、落石に注意さえすれば比較的安全に登れるなと思いながら、最後の長い梯子を上がると頂上に着いていた。
雲が涌いてきており視界はあまりよくなかったので足早に記念撮影を済ませ、下りの階段を降り、登りとは異なるルートを下る。
槍の肩で後方組と合流し、しばらく休憩後、苦労して辿り着いた相棒のためもう一度槍の頂上を目指す。
槍の穂先は既にガスがかかっていたが頂上で2度目のハイタッチと記念撮影を済ませ、無事槍の肩まで降りる。
槍ヶ岳山荘で1泊した。
10日も快晴で、私と田尻Sさんは中岳、南岳、天狗池を経由して下ることにした。
南岳からは西に朝日に照らされた笠ヶ岳から双六岳に連なる稜線が、東に蝶ヶ岳、常念岳、大天井岳の山体のシルエット、南に北穂、奥穂が見渡せる。来年はどこを歩くかと想像は膨らむばかりである。
南岳から少し戻った稜線から天狗原に向かって急な岩場を1時間半ほど下ると天狗池に出る。
池の縁には逆さ槍を狙った登山客が大勢いる。さっそくわれわれもシャッターチャンスを狙って待ち構えるも、天気は申し分ないのだが風が少しありなかなかチャンスが巡ってこない。
しばらく待つことにして昼食を摂っていると、20数匹の猿の軍団が悠々と池の縁を横切っていく。
まるでわれわれには無関心なように見える。ここでは猿と人が互いに干渉せず同じ場所を共有しているようである。
人も宗教や人種で争わず同じ場所を共有できればいいのにとふと思う。
そろそろ行こうと腰を上げた時、水面に逆さ槍がきれいに映っている。それ急げと縁に駆けつけ渾身の1枚をゲットする。
ところで相棒は朝から急性高山病の症状あり田尻Hさんに付き添われて下山していたが、下るにつれ気分は回復してきたとの連絡あり胸をなで下ろす。
天狗原分岐を過ぎたところで合流し、予定通り徳沢園に到着。無事下山したことを祝い名物のソフトクリームで乾杯をして山行の終了となる。