個人山行 中央アルプス

嵐の越百山・南駒ヶ岳・空木岳

窪田

越百山…「百の山を越えなければたどり着けないほど山深い」というのが由来との説があるそうだが、ここはCOSMO山=「宇宙」を意味するラテン語に掛けておきたい。
雄大な響きをもった地図を開くたびに気になっていた山である。また、中央アルプスは1996年-1997年の年末年始以来20年ぶりの再訪で、前回辿った木曽駒ヶ岳から空木岳のルートと今回のルートを繋げば中央アルプスの主立った山を縦走できることになる。
今年の夏休みは短くて、おまけに梅雨明け前後の微妙な時期だけに、山域を決めるのに思案したが、上述の理由から「越百山〜空木岳縦走」に決定。
伊奈川ダム登山口から反時計回りで越百小屋・木曽殿山荘2泊するゆったり山行を計画した。
ここまでは良かったのだが、「山小屋予約は天気を見ながら一週間ぐらい前に取ればよかろ〜」と気楽に考えたのが失敗の元。いざ予約を取ろうと電話したらどちらも「お気の毒ですが定員オーバーで泊められません。」との返事。
中央アルプスはテント禁止なので、いくらお気楽な私でも顔が青くなる。急遽計画を練り直して摺鉢窪避難小屋1泊2日の弾丸登山に変更する。
ところが出発まで天気予報や現地の情報収集をしていたら、泣きっ面に蜂とはこのこと、今年は摺鉢窪避難小屋の老朽改修予定で「緊急時以外の宿泊はご遠慮下さい」とのこと。今更計画を変更するわけにも行かず先が思いやられるが、どうにかなるさと長崎を出発した。
7/22(土) 長崎を前夜出発し、夜通し運転して朝方に中津川へ到着する。
今日は、馬籠宿で一日観光としゃれ込む。山間部なのに暑く気温は31度を超えている。
午後、須原のスーパー「マルトシ」で前夜祭の食料類を買い込み、伊奈川ダム登山口に向かう。
14:55伊奈川ダム登山口到着。駐車場はガラガラだ。
車の横にテントを張り、ちょっと早いが前夜祭で二人盛り上がる。日中暑かったせいもありビールがスイスイ入って酔いが回りいつ寝たのか記憶がない。
7/23(日) 4:00起床、5:02出発。昨日の暑さとうって変わり、曇天のせいでそれほど暑くない。昨夜の保冷剤代わりの氷が溶けずに残っており、三田さんが上で焼酎をロックで飲みたいということなので、テルモスに詰めて持って行くことにする。
林道を黙々歩くこと45分、越百山登山口に着く。この間、ご夫婦らしき越百日帰りの二人に出会ったのみ。
膝丈のクマザサの茂った登山道を黙々登っていくと、四合目水場に着く(6:20)。パイプからキンキンの細い水が勢いよく流れ出ている。
ヒノキの巨木の間を2時間登り、七合目の水場に着く(8:20)。避難小屋にはきれいな水場がないのでポリタンクを満たして歩荷する。
私は2リットルポリタン2つに計4リットルを補給する。ザックが急に重くなり息が上がる。
登山道がほぼ水平になると赤い屋根の越百小屋に到着(9:32)。登山者が4人ほどいてそのうちの単独行の男性は天気が悪くなる予報なので下山するとのこと。稜線は風と雨が酷かったらしい。
出発しようとする頃、雨がぽつぽつ降り出し、久しぶりにカッパを着る。
小屋を出てしばらく歩くとシャクナゲが咲いていて、ガスで眺めがないのを癒やしてくれる。

越百山頂

越百山はガスの中
10:50越百山到着。ミルキーウェイの中にでもいるような視界数十メートルの雲の中で小雨も降って全く眺めなし(COSMOだからまあいいでしょう)。
お互いに写真を撮り小休止して仙涯嶺に向かう。雨が降るだけならまだしも西側の谷底から吹き上げてくる風が強くて閉口する。風速十メートル以上はあるかもしれない。

仙涯嶺悪所通過
稜線では体がよろけ、ザックカバーがばたつき吹き飛ばされそうになる。
動いていないと体がドンドン冷えて体力を奪われていく。こんな状況だと夏山でも低体温症になるなーと考えながらただ黙々歩く。
仙涯嶺の悪場もガスにのまれて高度感が全くない。14:46標識が取れた南峰に着く。
南駒ヶ岳と勘違いし、時間をロスする。

南駒ヶ岳
15:07に立派な標識の付いた南駒ヶ岳に着くが、横殴りの風雨が強いので写真を撮り早々に摺鉢窪分岐に向かう。
15:31摺鉢窪分岐の標識が見えたときには風がしのげると思い本当にほっとする。
摺鉢窪側に下ると風もピタッと収まり、ハクサンイチゲやシナノキンバイの白や黄色のお花畑の中を黙々下る。コバイケイソウはつぼみも何もなく葉っぱだけ。
今年は積雪で成長が遅かったのだろう。雨で滑るガレた登山道を避難小屋目指して下るがなかなか着かない。
“避難小屋は改修中”とのことだったが、まさか吹きっさらしではないだろうと思いながら下る。コースタイムの倍の30分でようやくガスの中に小屋が見え、中に入るとホッとする(16:00)。
案の定誰もいない。時間から見て、もう来る人はいないだろう。今夜は貸し切りとみて、寒いので小屋内にテントを張る。
今夜の晩飯はキーマカレーとサラダ。カレーはアウトドアの定番である。
つまみをつまみながら担ぎ上げたワイン・焼酎類をチビチビやるが体が冷えてかなり疲れたせいか昨夜ほど飲みたいとは思わない。
三田さんが飲みたいと言っていた焼酎のロックも寒いので止め、せっかく担ぎ上げた氷は全部捨てる。
先ほどまでは静かだった辺りは風雨が激しくなり、時折ごうごうと風の音が響く。こんな時、小屋は本当に有り難いとつくづく感じる。嵐の音を聞きながら寝袋に潜り込む。
7/24(月) 4時起き、5:15に避難小屋を出発する。
今日もガスの中で霧雨交じりなのでカッパを着ける。
花々は雨に濡れて生き生きしているように見えるが、光が足りないので写真写りが悪い。それでも昨日撮れなかったので時折撮影タイムで立ち止まる。

空木岳
摺鉢窪分岐の稜線に上がると昨日ほどではないが風が強い。また風と雨に打たれながら歩く。もういい加減着くかなと思った頃、やっと空木岳頂上に着く(7:27)。
空が薄ぼんやりして少し日差しが戻ってきたが、相変わらず雲の中で何も見えない。20年前の正月に登った時とは既に標識も変わっていたりして、印象が全く違う感じがする。
空木岳からは岩場の間を縫うようにして木曽殿越しへ降りていく。
明るくなってきたと思ったのはつかの間で相変わらずの悪天候である。
途中で、今日最初で最後の5人ほどのパーティーとすれ違う。
8:37木曽殿山荘に着く。泊まりは誰もいないようだ。
ここからはただ下山するだけなのであまり期待していなかったのだが、木曽殿山荘からしばらく下った南側斜面に、今回一番のお花畑があった。斜面一面に競うように花々が咲き乱れていてとても豪華だった。
しばし見とれ、それまで撮れなかった分を取り返すためにビシバシシャッターを切る。高山植物は寂しがり屋なのか、適地を離れるととたんに見られなくなる。
義仲の力水を過ぎる頃にはゴゼンタチバナと、時折ギンリョウソウを見かけるぐらいで、林の中をただ歩くだけ。
12:32ウサギ平に到着。ここから林道をショートカットして金沢土場に出るはずの登山道を探すが見当たらない。元々ないのか藪の除草中なのか良く判らない。
林道をとぼとぼ歩いてようやく14:30伊奈川ダム登山口へ下山。
▼360度のパノラマを期待していたのだが、残念ながら今回は視界不良で風雨に打たれ修行のようなピークハント山行になってしまった。山はいつも快晴とはいかない…やけに嵐が記憶に残る山行だった。
コースタイム:
7/22 14:54伊奈川ダム登山口(泊)
7/23 05:02伊奈川ダム登山口→05:04今朝沢橋分岐→今朝沢林道→05:45越百山登山口→06:20四合目水場→08:20七合目→09:32越百小屋→10:50越百山→12:29仙涯嶺→14:46南峰→15:07南駒ヶ岳→15:31摺鉢窪分岐→16:00摺鉢窪避難小屋(泊)
7/24 05:15摺鉢窪避難小屋→05:49摺鉢窪分岐→06:08赤梛岳→07:27空木岳→08:37木曽殿山荘→09:08義仲の力水→10:11八合目→10:43七合目(仙人ノ泉)→11:29六合目→12:32ウサギ平→13:10金沢土場→14:30伊奈川ダム登山口
参加者:
 三田T、窪田  計2名