橘湾岸スーパーマラニック103Km参戦記

三田 T

 山登りと同じくマラソンも、だんだんと経験を積むにつれ、より高みを目指すというか、記録や距離を伸ばすことを意識してくるようになる。
小生も山のトレーニングがてらマラソンを始めて12年ほど経つが、10キロレース、ハーフマラソン、フルマラソンと経て、より距離を目指そうかなということでウルトラマラソンに興味を持つようになってきた。
 そんな中、長崎県内には長距離の大会がない(数年前に開催されたハウステンボスフルマラソンも1回限りでオジャン)ということで、10年前に、有志で立ち上げられた「橘湾岸スーパーマラニック」に参加してきた。ちなみにマラニックとはマラソンとピクニックを合わせた造語である。

 この大会は、毎年春(5月)と秋(11月)に開催され、現在は春の173Km、80Km、55Kmの3部門、秋は103Kmと2年に1回開催される276Kmの2部門がある(今回は103Km部門のみ)。
ちなみにウルトラマラソンはフルマラソン(42.195Km)を超える距離のレースのことをいい、一般的には100Kmのレースを指す。巷ではマラソンを完走するためには、人それぞれだが、月間にその距離の2.5倍、つまり、フルマラソンであれば約110Km以上、100キロマラソンであれば約250Km以上のトレーニングを積む必要があるという。
 ということで、私も事前トレーニングとして、7月250Km、8月は夏山山行もあり90Km、9月190Km、10月250Km(うち30Km走を2日連続、60Km走を1回)こなし完走するべくレースに臨んだ。
 今回のコースは島原半島の南部分を半周し、雲仙を越えてスタート地点の小浜に戻る103Kmコースである。
主催者によれば、コースの後半、フルマラソン以上の距離を残して、2つの超激坂を登ってスタート地点に戻る山登りのコースであり、毎年10時間を切る記録が出るか出ないかということで、一般的なウルトラマラソン100Kmよりも2〜3時間かかるということである。
 スタート時間は各選手の過去の実績を勘案し、ウルトラマラソンのサブテン(100Km10時間切り)ランナーは午前1時か2時、フルマラソン経験者は23時〜0時、高齢ランナーは21時又は22時にスタートする等事務局が決定することになっている。
 ゴール閉鎖時刻は一律17時、マラニックということで、給食や景色を楽しみながら走ってもよし、記録ねらいで走ってもよしの大会なのだが、6つのチェックポイントの通過を確認するため、シートにパンチをしなければならず(パンチ漏れは失格)、また、コースの一部になっている雲仙地獄の遊歩道では観光客に配慮し走ってはならないなど、独特のルールがある。
 私は11/4(金)の23時50分スタート。真っ暗な中、安全のためヘッドランプ、反射テープ、ザックには点滅ライトを着けてスタートする。
ヘッドランプはあるものの、路面は微妙な段差があり、注意して走らなければならない。今回のレースでは、4人が途中転倒負傷、病院搬送により棄権したとのこと。
コース前半はほぼ平坦なものの小刻みなアップダウンもある。睡魔との闘いもある中、ほぼ7分/Kmのぺースで、途中、「コケコッコー」の鶏の鳴声に励まされながら黙々と走り、夜明けを迎える。
 途中のエイドはゴールまで15ヶ所、これが充実しており、飲み物(水、お茶、スポドリ、コーラ、オレンジジュース等)、果物(ミカン、オレンジ、リンゴ、パイナップル、バナナ等)のほか、トマトゼリー、中華粥、おでん、ソーメン、カステラ、杏仁豆腐、豚汁、ぜんざい、おにぎり、いなり、などなど、豊富なメニューでこれを楽しみにしているランナーも多いらしい。
何よりたまげたのは、島原城近くのエイドでは鯛の活づくりと鯵のタタキが出て来たこと。思わずビールを飲んでしばし休憩したくなるメニューであるがそうも言ってはいられない。ヘッドランプ等不要な荷物を預けて再び走り出す。
 しかし、これからがこのコースの本番で、眉山ロード(最高標高約500m)を登って下った後、雲仙仁田峠入口(最高標高740m)まで登り返し小浜まで下るハードなルートである。
 さすがに眉山ロードの登りは完全に歩き。それでも、平成新山の眺めが疲れた気持ちを和ませてくれる。
その後の眉山ロードの下りは足がパンパンに張って、スピード上がらず。
 下り切ると息もつかせず、また雲仙越えの激坂に入り、何とか歩きを入れながら乗り切る。
痛みで足が前に出ないので、79.8Km地点の俵石展望所でロキソニンを飲むと、効き目なのか気分なのかわからないが足が前に出るようになり、最高地点(標高740m)までの残り5キロはジョギング程度であるが、走って登り切ることができた。
 そこからはほぼ下りになるが、これまでとは違い、嘘のように軽快に足が出て、キロ6分台前半で下る。
途中、新湯ホテルから雲仙小地獄までは山道をコースとして用意してくれており、最後は気持ちよく走れ、15時間14分かけて完走することができた。
 ゴール後は、ゴール地点から徒歩1分の小浜の脇浜温泉で汗を流し、車で自宅に戻る。
自宅へは現地から44Km、これを往復しても届かない距離、そして私のGPS記録では高度上昇値2138m、そして同じ高度を下った自分の脚に感謝!
今回の103Kmのレースには335名が出走し、完走268名 (完走率80%)、女性で最高齢の76歳の方が20時間3分で完走され、83歳の男性も雲仙地獄で関門に引っかかったものの87Kmまで走ったとのことで、いろんな意味で元気をもらった大会でした。
初ウルトラはきつかった。けど、面白かった!