個人山行 西穂山荘から独標を目指す

中島 Y

「ロープウェイを使って北アルプスに行かないか」と妻が話を持ってきた。
持病の喘息に加え、2年前に手足の筋肉が突然やせ細る奇病で19日間入院中に車椅子から歩行までリハビリ、退院後は薬物治療と散歩だかウォーキングをぼちぼちの毎日、後期高齢者だか末期高齢者に達し体力気力が衰えるばかり。
例会の参加も総会、山小屋整備、自然歩道除草など山に登らないものがほとんどで、山登りの例会はいつも妻から置き去りにされる。
会員の山行報告をただうらやましいと思ってきたが、ロープウェイの助けでまた北アルプスが歩けると、この話に乗る。
行動時間を標準の2倍程度で計画し、ゆっくり歩けば何とかなろうと、スケジュールを立てる。
9月25日(日)、JRで名古屋経由高山まで移動、ホテル泊。
市内中心部を散策する。若い外国人観光客が多い。
9月26日(月)、雨。
高山からバスで新穂高温泉まで移動、第1、第2ロープウェイを乗り継ぎ、高低差1,000m余りの山頂駅、標高2,156mに約12分で到達する。
山頂駅に着いた頃から雨になる。展望台から見上げる稜線に西穂山荘がちらりと見える。
雨の中を登り始めるが、高所と喘息のせいか息苦しさを感じ、何度も深呼吸をしながら歩く。
若い外国人が下りてくるのに数人行き会うが、Tシャツ、短パン、スニーカー等の軽装空身で、中にはゴム草履の女性もいた。
始めは足取り軽く、後は喘ぎ喘ぎ西穂山荘に着く。標高2,385m、高度差229m。
山荘は快適で、食事もおいしく、多くの宿泊客で賑う。団体客が多い。
10人部屋に10人宿泊。同室の60代のご夫婦は奥穂高まで縦走するという。凄い。ヘルメットなしで大丈夫かな。
夜空いっぱいの星に感動。明日の晴天を予感する。

西穂山荘と焼岳
9月27日(火)、晴れ。独標往2,701mを目指す。高度差316m。やはり息苦しさを感じ、深呼吸をしながら出発。
ほとんどの宿泊者は出発すみ。二人のんびり出発する。
左に笠ヶ岳、後ろに焼岳、右下には上高地の眺望を満喫しながら、喘ぎ喘ぎ高度を稼ぐ。
20年程まえに登った笠新道はあのあたりか。元気な頃が懐かしい。
登山者は多い。後から後から来る人に次々道を譲り、マイペースで登る。
「ゆっくりでよかけん歩いて。動けんごとなっても降ろしきらんけんね」 後ろから励ましと警告の檄が飛ぶ。

西穂高独標
心肺能力と脚力の衰えを痛感する。
独標が見えたところで昼食休憩、ここでタイムアウトを宣言される。
独標を目前に、残念ながら体力、脚力使い果たし、休憩が必要。

穂高連峰
また置き去りにされた・・・。
昼食後、スローペースで体力を十分温存していた妻は、見る間に岩場にとりつき、独標頂上に達する。
下りは展望所で奥穂高はじめ穂高連邦の眺望を楽しみ、山荘に帰着。
今夜も素晴らしい星空。但し明日は雨の予報。
9月28日(水)、雨。
雨。昨日は晴天に恵まれていたことに改めて感謝。
西穂山荘から、上高地まで下りる。
上高地までの登山道はよく整備されている。
下りでもやはり脚力の衰えを痛感、スリップ、転倒に十分注意し慎重に下る。
いろいろの種類のキノコが散見され、目を楽しませながら下る。
木立に覆われた道であまり感じなかったが、上高地に降りると猛烈な降りで、バスセンターまで這う這うの体でたどりつく。
新島々までバスで、松本電鉄で松本まで移動し宿泊。雨も小降りになってきた。
9月29日(木)、JRで松本から名古屋経由長崎帰着。

何十年ぶりの北アルプス、1日だけ晴天に恵まれ、目的の独標には到達できなかったが、山小屋連泊のゆったりした山行を楽しんだ。
妻は、標準時間の2倍の行動計画を見て曰く「こんなにかかるじゃろうか、と思ったが、ほぼその通りだったので、おかしかった」。
健康寿命のうちに、もう少し体力作りに励もうか、もっと楽なロープウェイや登山バスを使った、北アルプスその他のトレッキングを探そうか。
スケジュール:
9/25:長崎06:25(かもめ4)―08:35博多09:04(のぞみ16)―12:30名古屋12:48(ひだ11)―高山
9/26:高山07:40(濃尾バス)―09:16新穂高ロープウェイ西穂高口10:55−13:15西穂山荘
9/27:西穂山荘07:10−10:20独標―12:20西穂山荘
9/28:西穂山荘07:00―11:30上高地バスターミナル12:47(バス)―13:45新島々14:05(松本電鉄)―14:35松本
9/29:松本08:36 (しなの4)―10:52名古屋11:14(のぞみ21)―14:39博多14:55(かもめ27)―16:50長崎