個人山行 2016年夏 剱岳

剱岳・立山・奥大日岳

窪田

「山と渓谷2015年6月号」に掲載されていた「八ツ峰」の記事と写真の美しさに惹かれ、今年は初めての「山の日」と盆休みを使い、久しく遠ざかっている剱岳のクライミングを中心に据えた個人山行を三田さんと計画した。
ただ出発直前、残念なことに長野県警ホームページで「剱沢雪渓崩壊、長治郎谷通行不能!」とのショッキングな夏山緊急情報が飛び込み、急遽、八ツ峰から源治郎尾根へ計画を見直すことになった。
更には、源治郎尾根取付きの平蔵谷出合も雪渓崩落が進んでいるという良くない情報もあって、行くべきかそれとも山域を変えるべきか出発前日まで悩むことになった。
結局は結果オーライであったが、インターネットでリアルタイムに情報が手に入る今でさえ、現地に行ってみなくちゃ判らないという掟どおりの山行だった。
 今回の行動は久々の夏山でもあるし、剱岳を中心に立山・奥大日を加えた欲張り気味の予定だったが、記念すべき「山の日」を含め登りごたえのあるルートから剱岳に二度も登頂し、立山山域を5日間腹一杯満喫した。
 立山三山と奥大日岳は一般ルートなので報告は割愛し、剱岳源治郎尾根と南壁A2ルートに絞って報告する。
<2016年夏山個人山行の行動概要>
8/10 室堂入山
8/11 源次郎尾根バリエーションルート登攀
8/12 立山三山
8/13 剱岳本峰南壁A2登攀
8/14 奥大日岳往復、下山
源治郎尾根
 細かいルート説明はガイドブックに譲るとして、源治郎尾根は一峰・二峰のピークからなり、行程の下部が木登り、上部が岩登りの剱岳頂上を終点とする高低差約1000mの急峻な尾根である。
元々の計画だった八ツ峰縦走を出発直前になって止む無く源治郎尾根に変更したので気持ちが切り替わらず、剱岳東面では八ツ峰に次ぐ人気バリエーションルートとはいうが、正直いって取り付くまでは“代打” の感が否めなかった。
加えて雪渓の状態如何で進退が左右されることもありテンションもいまひとつだった。
 「しかし」である。さすがに人気ルートに違わない、岩登りあり・懸垂下降あり・ルートファインディングあり・高山植物あり、まさに登山の総合デパートといっても過言ではないバリエーションルートで、特に今年は雪渓崩落が逆に幸いして登山者がいなかったので静謐な登山を満喫できた当たり年だった。
 一峰まではルンゼコースと尾根コースの二つのルートがあるが、ルンゼコースは落石の危険があるため尾根コースが一般的なことから、我々も尾根コースを辿った。
取り付き地点からすぐにある第一関門の“登れなかったら敗退宣言”なる岩場、第二関門の“ロープを出すパーティーもある”という岩場は、実際に取り付くとホールド一杯で難なく通過し、これぞバリエーションの醍醐味とでもいうべきマーキングなし、スラブの岩場、二峰の25m懸垂下降、最後は剱本峰への登頂…等々、魅力満載だった。
しかし2016年の夏の最大関門は何といっても「剱沢雪渓」だったのかもしれない。


源次郎尾根…剱沢・平蔵谷出合からの剱岳に突き上げる長いルート(別山北峰から)


下半部は木登り。ハイマツの間を縫うように根っこを掴みながら登る。


木登りを抜けると視界が開け、高山植物に癒されルートを探しながら登る。


やれやれ、一峰に着いた。八ツ峰が良く見える。


一峰から二峰と剱岳を見る。二峰は一体どこから登るのだろう?
パッと見ただけではルートが判らない。とにかく行くしかない。


二峰にて。ここも眺めが良い。剱岳山頂がずいぶん近くに見えてくる。


二峰からの懸垂。下まで30m弱らしい。ごつい鎖と捨て縄がある。
鎖と捨て縄にロープをかけ投げるがどこまで届いているのか判らない。クライムダウン!


懸垂下降中。ほとんど垂直で気持ちイイ。


二峰を下降側から見る。


二峰から剱山頂まではガレた登りが続く。日差しが強く、何度も水分補給する。


岩峰、また岩峰…。


14年ぶりの剱岳山頂。やっと着いた。

剱岳南壁A2ルート
 せっかくの剱岳、アルパインクライミングもぜひ組み入れたい。剱沢ベースで登れる範囲を絞り、南壁A2ルートに決定。
前日の源治郎尾根の疲れを癒すため、中一日は立山三山を挟んで8/13に登ることにした。(ただ「立山三山」は結構長時間行動で癒しにはならず…笑)
このA2ルートも結構人気のようで、当日は我々以外にも2パーティーがクライミングを楽しんだ。
ルートはV級と比較的易しいが、3000m近い場所でのスケールの大きなクライミングはスリリングでワクワクする体験である。手を伸ばせばすぐ届きそうな所にカニのタテバイ一般ルートがあり登山者が手を振って応援してくれる、そんな快適ルートだった。


ルートの概観。遠望すると“手ごわそう”に見えるが…。


平蔵のコルからA2方向を見る。

ホールドはいっぱいありそうだ。
例年ならば取り付きまで雪渓があるようだが今年はほとんどない。急斜面のガレ場を慎重に取り付きまで下っていく。


1ピッチ目。


3ピッチ目。浮石を落とさないように進む。


4ピッチ目。

核心部は通過して大岩が多くなる。残置ハーケンを探しながら慎重にザイルを伸ばす。


6ピッチで無事登攀終了。快適なアルパインクライミングでした!


<おまけ>


剱沢キャンプ場の朝。毎日快晴!!


剱岳にはトリカブトの群落がたくさんありました。

コースタイム
08/09(火) 19:00長崎発〜高速経由=
08/10(水) 6:30 立山IC=7:10立山駅8:30=9:30室堂〜10:20雷鳥沢〜12:05別山乗越〜12:45剱沢、剱沢下見(幕営)
08/11(木) 剱沢4:00〜5:07平蔵谷出合〜5:21源次郎尾根登攀開始〜7:54T峰〜8:35U峰〜10:14剱岳〜12:09前剱〜13:30剣山荘〜14:00剱沢(幕営)
08/12(金) 剱沢5:00〜7:00雷鳥沢キャンプ場〜7:40室堂7:50〜8:35展望台〜9:15軍人慰霊碑〜9:33浄土山北峰〜9:46浄土山南峰〜9:58龍王岳〜10:10浄土山南峰〜10:35一ノ越〜11:35雄山12:11〜12:33大汝山〜12:54富士ノ折立〜13:30真砂岳〜14:30別山北峰〜14:48別山南峰〜15:30剱沢(幕営)
08/13(土) 剱沢3:08〜3:36剣山荘〜5:30平蔵のコル〜5:40剱岳本峰南壁A2取付き〜6:04登攀開始〜9:02登攀終了〜剱岳山頂9:45〜12:50剱沢(幕営)
08/14(日) 剱沢4:45〜5:33剱御前小屋5:41〜6:36新室堂乗越〜8:10奥大日最高地点〜8:35奥大日岳〜9:47新室堂乗越10:04〜10:28雷鳥沢キャンプ場〜11:28室堂11:50=12:50立山駅=金沢
08/15(月) 金沢6:00=高速経由=16:39長崎着