個人山行 2016夏 剱の岩場に遊ぶ

三田 K

 
剱岳は厳冬期、残雪期の経験はあるが、夏は初めて。8月11日の山の日を剱で過ごそうということになる。
今回は剱沢をベースに、源次郎尾根と本峰南壁の登攀を組み込んで、立山三山周遊や奥大日岳まで足を延ばす贅沢な山行となった。
 当初は八ツ峰縦走を目論んでいたが、出発直前に富山県警のホームページをみると記録的な猛暑で剱沢雪渓が崩落しており、平蔵谷(へいぞうたん)出合から長次郎谷(ちょうじろうたん)出合いまで通行不能という情報。急遽ルートを変更し、源次郎尾根縦走に切り替え登山計画書を練り直す。
ところが、室堂ターミナルで登山届を提出したところ、さらに雪渓の状態が悪くなっており武蔵谷(たけぞうたん)出合から下もダメとのことで、登山届を付き返され、いきなりテンションがダウンする。
しかし、現地に行ってみなければわからないので、剱沢にテント設営をした後、野営場管理所で情報収集し、源次郎尾根取付地点を偵察することにする。
剱沢と平蔵谷出合の雪渓を渡るところがポイントだったが、一応ザイルを張って、横断可能箇所を確認、尾根に取付可能なことを確認する。
 「源次郎尾根」の名前の由来は、富山県芦峅寺(あしくらじ)集落の山ガイドで剱沢小屋建設に尽力した佐伯源次郎(明治8年生、本名:源之助)が大正13年の夏に、小屋建設の合間を見て仲間とともに平蔵谷から剱を目指す途中、間違えて右の雪渓に入りこんでU峰のコル近くの稜線に出て剱山頂に達したとのことで、未踏のルートであったことから「源次郎尾根」と命名されたらしい。
 ついでに、「平蔵谷」は同じ芦峅寺の山ガイド佐伯平蔵が大正2年に下った谷、「武蔵谷」は昭和初期に佐伯武蔵が平蔵谷と間違えて下った谷、「長次郎谷」は明治40年に参謀本部陸地測量部による剱岳測量を支えた宇治長次郎に由来する。
 剱沢からみる源次郎尾根は、八ツ峰の顕著なスカイラインの手前にあるのであまり目立たないが、T峰、U峰からなる急峻なルートは、ルートファインディング(割合踏み跡はしっかりしていたが)やU峰から懸垂下降が必要な箇所があり、クライミングの基礎的技術は必要。
何より八ツ峰を眺望しながら歩くことができ、取り付きから剱岳山頂まで約5時間、縦走の醍醐味を味あわせてくれた。
 一方、剱本峰南壁A2は、剱岳で最も高い位置にある岩場でA1〜A4からなる4つの岩稜の一つ。
Aはアレートの略でフランス語で鋭い、痩せた岩稜という意味。
平蔵のコルから平蔵谷を下降して取りつくが、通常なら雪渓を下るところ、猛暑のせいで雪渓は無くザレ場を慎重に下り、岩雪崩に注意しながら取り付く。取り付き地点はテラスになっておりすぐわかる。
ルート上には残置ハーケンもあるが、ザイルの流れが悪いところもあるので、岩や木にランニングを取る必要がある。
岩は風化して浮いているところもあるが、比較的固く、何より眺めがいいので、快適なクライミングを味わうことができた。
窪田君と2人ということで、つるべでリードを交代し、一般登山道からギャラリーの声援を受けながら約3時間で登攀を終え、この山行で2回目となる剱山頂を踏む。
 今回はバリエーションルートである源次郎尾根、本峰南壁を体験。いずれも、登山靴で登り、天気も良すぎてそれなりの水分を消費した。
入門ルートであるがやはり本チャンの岩場はいい。いつか八ツ峰にも行ってみたいものである。
参加者
 三田、窪田