個人山行 見立周回 傾山〜夏木山〜五葉岳

(2015年4月25日〜28日)

田尻 忍・博子

 2〜3年前から温めていた計画をいよいよ実行に移そう。テント泊の荷物を持って長時間歩けるのか?PCから計画書を取り出しては、行きたい気持ちと、不安な気持ちとで揺れ動く日々。
幸い?今まで色々な事で実行出来なかったが、今年は行けるようだ。途中リタイアもありと考え何とか頑張ろう!!
 1台の車で移動して@傾山〜杉ヶ越を歩く、A犬流れ越にテントを張る、B夏木山〜五葉岳の稜線を歩く、この3つの思いを叶えるコースを下記のように考えた。
上見立(兜巾岳登山口)車を置く〜見立英国館〜夕ヶ鶴〜黒仁田林道〜九折越(泊)〜傾山〜杉ヶ越〜新百姓山〜犬流れ越(泊)〜夏木山〜五葉岳〜兜巾岳〜上見立

4月25日(土)晴
 11:00自宅出発。大分道米良ICで降りて南下、木浦名水館で豊の国名水百選の「蓮光寺湧水」を4L汲ませてもらう。これは明日、杉ヶ越の杉囲大明神にデポして27日の縦走途中で取る予定だ。
今回の縦走で一番問題なのは、九折越下で水を補給した後、下山するまで水場が無い事。
往路に車で通る杉ヶ越の登山口からは10分位で縦走路(杉囲大明神)に行ける。そこでデポを考えた。
これが出来るので今回の縦走計画が作れたのは言うまでもない。九州の岳人にとって祖母〜傾〜大崩縦走時に水をデポする事はご法度らしいが、我々の年齢を考慮して許してもらおう。
計画の段階で必要な水の量を計算したが、テント場に水が無いというのは思った以上にプレッシャーになるもので、毎晩シュラフに入ってから、頭の中で「今ある水が○○○mlで、明日の朝は○○○ml使い、行動中の水は・・・、明日の夕食には・・・」と計算。いくら計算しても水は湧いて来ないが・・・
 16:30杉ヶ越トンネル手前の休憩所「コミュニティ施設」に到着。屋根付の舞台のような所にテントを張る。

4月26日(日)晴
 6:30出発、杉ヶ越トンネル宮崎県側の登山口から杉囲大明神まで登り、昨日汲んだ水4Lをデポする。捨てられると困るので「縦走のためにデポしています。27日に通過予定です。」とメモを入れる。
その後見立方面へ車を走らせ「国定公園 兜巾・五葉登山口」の朽ちた標識があるスペースに車を停める。
 7:30いよいよ縦走の始まり。車道を歩き英国館の横を通り、8:30夕ヶ鶴を過ぎ沢に沿って歩く。
今回の計画で情報が少なく道の様子が判らなかったのが此処のコース。
案内のテープと少ないが標識もあり、あまり踏まれていないので歩きにくい箇所もあるが、見立本谷は新緑と水の流れが気持ち良く、心配していた最後の渡渉地点も、この数日の晴天で靴を履いたまま渡れる。
 11:00黒仁田林道に合流すると、何回か車で通った見覚えのある道なのでホッとする。
林道終点には4台の車が停まっている。水場で4Lとペットボトルやテルモスの空になった分にも水を補給する。急に荷物が重くなり、「水攻めだ!!」と益々ゆっくりのペースで歩く。
九折越には12:20着。此処で小屋泊の予定だったが、明日の行程を考えて先に進む事にする。この先テントを張れる場所があるか??
 センゲン尾根はだんだん急登になり、天気が良いので暑くもあり、杉ヶ越への分岐まで来て、「此処に張れそう!!」と強引に此処をテント場に決める。空身になって傾山頂へ。14:50
 アケボノツツジが咲く山頂からは、遠くには大崩、鹿納坊主も見渡せる。
明日歩く新百姓、桧山や夏木山〜五葉方面、そして祖母山、大障子、前障子と360°の展望を楽しむ。
15:20杉ヶ越分岐まで戻り、木の根っ子などを取り払い整地して快適?なテント場にする。
16時過ぎてから中年4人の傾〜祖母縦走組が下りて来た。彼らはこれから九折越の小屋まで、その後水を汲みに行き夕食、明日は10時間以上歩かなくてはいけないと、自分達の事と合わせて、頑張って!!という気持ちになる。
 夕食を済ませ、大障子、前障子を赤く染めて落ちる夕日を眺め、何時ものように明るいうちにシュラフにもぐる。
ちょっとうつらうつらして、暗くはなっていた20時過ぎ頃だっただろうか、テントの外にヘッドランプの明かりが・・・なんと、一人のトレイルランナーが!!
上畑から傾、これから杉ヶ越〜夏木〜五葉〜大崩〜桑原山〜木山内岳〜夏木・・・100Kmを40時間かけて踏破するという。
大会に参加する為のトレーニングということだが、暗い中寝ないで走る(歩く)なんて。いやいやもうびっくり。

4月27日(月)晴
 気持ちの良い朝日が差し込み、6:30出発、いよいよ難関の杉ヶ越まで。
アケボノツツジが綺麗に咲いている中を下る。そしてハシゴや岩場が13とも15あるともいわれる登下降。だが道は良く踏まれており歩きやすい。
気持ちの良い尾根道もあり、時間は掛かったが無事に杉囲大明神へ。
11:00デポしていた水を取り、ゆっくり休憩の後、新百姓山へ向う。水が増えるとまたしても「水攻め」状態になるが、此処から先の尾根はヒメシャラの木が多くなり、ミツバツツジ、アケボノツツジが彩を添えて新緑の林が美しい。この景色を見る為に来たのだと嬉しくなる。
 15:30犬流れ越着。以前来た時、この林の美しさにテントを張ってみたいと思った。
昨日のような展望は無いが、赤いリボンを巻いたヒメシャラの木と大きなブナの木に囲まれ、広く水平で快適なテント場になりそう。

4月28日(火)曇、ガス
 長い間晴天が続いていたので、さすがに今日は下り坂。
5:50テント場を出発。小鋸、大鋸を越えて行く。曇ってはいるが展望があり、昨日歩いて来た傾山から杉ヶ越の山並みも遠くなった。
夏木山に近づくと山肌がピンクに染まっているのが判る。
8:50山頂着。今が見ごろの濃いピンクのアケボノツツジ、今日は曇り空なのが残念。
9:20山頂発。五葉岳までの縦走路の林は本当に美しい。特に今日はガスが出て来て、しっとりした雰囲気が良く似合う。
11:00五葉岳着。祖母、傾、大崩全般に感じるが、特に五葉岳周辺はスズタケやブナの木が枯れ、疎林になっているのが心配になってくる。
兜巾岳ではアケボノツツジを撮りに来たおじさん3人と会い、兜巾から見立への下りは急で危ないから気を付ける様にと注意を受ける。
12:30下り始めはアケボノツツジ、ミツバツツジに癒されるが、直ぐに急坂。しかも歩かれていない石交じりの落ち葉の道は、一歩足を置く度にズルッと滑る。所処に細いロープもあるが、頼りにはならない。急降下、滑るトラバース道(?)道ではないなぁ。
悪戦苦闘しながら歩くと、ヤマシャクヤクの花と出会う。群生とはいかないが暫くの間花が現れて、疲れを癒してくれる。
やっとのことで見立鉱山跡地に出ると、道らしくなってくるが、何度も水害にあったのだろう、石交じりの道は歩き難くなかなか先へ進まない。何度か渡渉箇所もあり、濡れて滑る岩に要注意。
古くは江戸時代から途切れながらも昭和40年代まで、錫の採掘をしていた見立鉱山、往時を偲ばせる水が溜まったトンネル、神社への朽ちた階段、共同浴場跡、まだ立派な石垣。
こんなに山深い場所で、それぞれに過酷な労働があったのだろうと思うと胸が痛くなる。
兜巾岳から4時間掛かって16:20駐車した場所に戻って来た。
このコース、上部には登山道らしきものがなく、鉱山跡に出てからも、渡渉があったりで道が判り難い。
古いテープもあったが、まだ新しいピンクのリボンが導いてくれた。これがなかったらもっと時間が掛かったと思われる。
 此処のコースも情報が少なく心配していたが、あるブログに「天気に恵まれ、アケボノツツジも堪能したが、あの下りがなかったらもっと良かった・・・」と書かれていた。同感。
確かに今回の縦走コースの核心部はこの下りだった。
 ただ毎日歩く、花を見ながら、新緑の木々に癒されながら。夜は深閑とした空間に休み、歩いて来た山並みを振り返り、これから歩く道を想う。少々きついが、とても幸せな時間。
予定通り歩けたのは、お天気に恵まれた事、毎日が長丁場だったので、ゆっくり時間をかけて歩いた事だろうか。

ヒメシャラ
コースタイム:
(5/26)上見立7:30〜8:30夕ヶ鶴〜11:20黒仁田登山口〜12:20九折越13:00〜14:25杉ヶ越分岐〜14:50傾山〜15:20杉ヶ越分岐
(5/27)杉ヶ越分岐6:30〜11:00杉ヶ越11:30〜13:50新百姓山〜15:30犬流れ越
(5/28):犬流れ越5:50〜8:50夏木山〜11:00五葉岳〜12:20兜巾岳〜16:20上見立