個人山行 中央アルプス

=木曽駒ヶ岳〜空木岳 単独縦走=

川添 正寿

10月下旬 一足早い紅葉を見るため、初めての中央アルプスへ単独走を挑んだので、以下に報告する。
▼10月20日、始発バスに乗車。菅ノ台バスセンターから約40名乗り込み満員、若者中心の登山グループばかり。
ロープウェイ使わず駒ヶ岳登山する人は、途中の北御所登山口下車だ。
山登りが好きであれば、せめて数人は、ここからチャレンジしてもらいたいと願っていたが、なかなか降車チャイムが鳴らず、「えっ、これだけ居て、誰一人もいないの?」と寂しがっていた矢先、高校生登山部らしき若者が一人下車。なんか救われた気分。
▼しらび平では、マイカー乗り入れ禁止で、私が乗ったのが始発バスのはずなのに、なぜかロープウェイ待ち客で混雑。理解に苦しむ。
約20分間待ち、2回見送った後の乗車。定員61名満杯で急坂を一気に駆け上がる。
斜面の山肌は紅葉に色づき、そこを細いが美しい滝が流れていて見とれてしまう。この時期の千畳敷カールに大勢の人が集まることに納得。しかし、土木技術者の私は、よくこんな急傾斜面に鉄塔が建設出来たなってことに関心が向く。
駒ヶ岳ロープウェイ建設は昭和42年。当時の技術水準や資機材の状況から見てもすごい。先人達の熱い情熱や強い技術者魂に触れたような気がした。
標高860mの宿舎から、1680mまでバス、その後1000mを一気にロープウェイで駆け上がる。
山へ導入した是非は別にしても、文明の利器は素晴らしい。2640m位置には、本来6〜7時間歩かなければたどり着けない場所へ、いとも簡単にあっという間に連れていってくれた。
▼千畳敷。いよいよ登山開始。木曽駒は見えないが、宝剣岳が恰好いい。
登山道は花崗岩の岩肌だ。50cm程の岩塊を踏みしめひたすら上へ、まもなくすると、宝剣山荘到着。周辺は積雪だ。
小屋を覗き、三田さんからの助言に基づき管理人から情報収集。“空木への縦走路には、そんなに雪はないのでは”とのコメント。
“ヨシッ”と縦走を決意!ただし、避難小屋の情報は得られず。一抹の不安!
▼30分後に木曽駒頂上着。しばらくは360度の景観に酔いしれる。雲の上に、3000m級の山が円状に連なる。
御嶽山が目の前に堂々と座っている。乗鞍、笠、穂高、槍が見える。八ケ岳連峰、そして南アルプス、甲斐駒、仙丈ケ岳、北岳があり、その右には富士山がある。そして今から縦走する山々だ。まだまだ先が長いため、余韻もそこそこに旅立つ。
▼ここからはそこまで高低差はないアップダウンが延々と続く。すべてが稜線沿いで、前後左右見晴らせて、歩くのは気分がいい。
右も左もハイマツと白い花崗岩の同じ景色が続く。名も知らないきれいな花がある。カラスに似た鳥がいた。しっぽに白い縦模様がある。帰って調べてみよう。
檜尾岳、熊沢岳、東川岳と2700m級の山々が続く。この日は、正午過ぎからガスがかかり始めた。これを見て下山を悩んでいる人もいた。すれ違う登山客はほんの数人。
空木岳が見えたが、頂上はガスで見えていない。野営予定の木曽殿山荘に着いたのは14:00!迷ったが、明日のこと考え、先へ進むことを決意。本日中に空木岳制覇だ。
結構歩いたが、道中、最もきつかったのは木曽殿越から空木岳へのアプローチと、見誤るほどいくつもある空木のピーク。これにはまいった。
▼空木岳頂上付近は幾つもの岩塊が積み木のように重なった岩峰であり、雄雄しく魅力的だ。
PM3:05、やっと、空木岳山頂に到着。残念なことに、回りは見晴らせない。しかも、とっても寒い。冬山並みだ。
それなりの感動を覚えた後は、空木平山荘を目指して、下山。沢沿いを歩く。結構、残雪あり。用心しながら下る。
▼山小屋には15:55に着!既に7人居たが、スペース余裕あり、ホットした。その後は、1時間ほどで夕食を済ませた。500ml缶ビール片手に、一人で25Lザックと向かいあい乾杯。これまでの経験が活きたのか、周りの登山客より、手際よく準備・後片付けが進んだ。
17:30には床に就く。19:30新たな登山客が来た。途中で追い越した客だ。周りは寝ているのに、食事やシュラフ設置に手間取り、いつまでもガソゴソ、周りも迷惑している様子。我慢してなんとか就寝。
23:00頃星を見に外に出た。いつもながら下界でみるのとは全く異なり感無量だ。人間のちっぽけさを感じる。夜中は、台風みたいに風が強かった。眠ることが辛いほど寒い。
▼10月21日、日の出とともに起床。パンとコーヒーで腹ごしらえし、6:00出発。
暫く経つと、南アルプスの上に太陽が昇る。富士山のすぐ横だ。荘厳さに、しばらく見とれていた。
この日は天気がすごくよかった。雲ひとつ無い。昨日、空木岳まで征服したことを少し後悔。下山中は紅葉を堪能。
 紅葉が楽しめたのは2000m〜2500m。2700m小屋から800mまで1900mの高低差を一気に下った。
空木へのすれ違った登山客は10数名。少ない。やはり空木は日帰り登山が厳しいことから避けられているのかもしれない。4時間後、菅ノ台登山口に下山。
▼今回、実行したことがある。記録をきちんとメモしたこと。反省点としては、高山花鳥の知識を増やすべきだと思ったこと。
せっかく3000mを登る人しか見ることが出来ない世界にいるのだからフルセット楽しまないともったいない。単独なら、なおさらそういう楽しみが必要だ。
▼次回は、逆ルートを歩きたい。空木岳への2000mを一気に駆け上がる。それと、東川岳の急坂。さらには、駒ヶ岳をロープウェイを使わず下りたい。きっと登り応えがあると思う。

コースタイム

10/19(金)   13:30名古屋発高速バス 駒ヶ根ICへ 路線バス乗継
  16:30 国民宿舎すずらん荘着(駒ケ池)
10/20(土)
  5:50 すずらん荘発、駒ケ池バス停まで徒歩10分、その後ロープウェイ行バス乗車約40分、乗車待ち15分、ロープウェイ約7分
  7:20 千畳敷着
  7:30 登山口(千畳敷)
  8:00 宝剣山荘
  8:30 木曽駒ヶ岳山頂
  9:25 宝剣山頂
  9:55 極楽平
  11:30 檜尾岳(昼食)
  12:35 熊沢岳
  13:40 東川岳
  14:00 木曽殿山荘
  15:05 空木山頂
  15:55 空木平小屋着(泊)
10/21(日)
  5:25 起床
  6:00 小屋発
  8:00 水場(池山小屋そば)
  9:35 菅ノ台下山
  10:00すずらん荘着、その後コマクサの湯
  11:00バス乗車
  11:30高速バス乗車(駒ヶ根IC〜名古屋)