個人山行 多良岳オオキツネノカミソリ

平山 裕子

平成23730()

今日は予定がない。ん?、7月も最終の土曜日、まさしくオオキツネノカミソリの満開花期じゃないかしらと、思いつきで多良岳へ向かう。

人が多いのは承知、でも今年の花を見たい。今年は当たり年だ、と根拠のない希望を持ちつつ八丁谷へ歩き出す。一時期の貸し切りバスや路駐の車もなく、シメシメとゆっくり登って行く。杉林を抜けて沢沿いの道に入ると、かなり下方にも花がちらほら現れ、思わず「いいかも〜!」とウキウキして来る。

水場へ着いて口をあんぐり! 周辺一帯がオレンジ色の満艦飾で、群落の規模も大きい。お花見は毎年当たりはずれがあるが、今年はピカイチ!!

見とれていると、山ガール3人がおしゃべりしながら下りて来た。

若者の素敵な出で立ちに、つい写真を撮りたいなと思うが、山ガールはおしゃべりに夢中で、声をかけそびれた。残念!オオキツネノカミソリは、木々に囲まれた薄暗い場所では、陽光を浴びて浮き上がり、足元では、晴れやかに色鮮やかに咲き誇る。写真を撮りながら、じっくりと花を味わいながら歩く。

群落の斜面は、花も人も大賑わいだった。こんなに綺麗だもの、時を逃さず観賞したいのは、誰しも同じだろう。一番の撮影ポイントで、近くの女性にカメラを渡して撮ってもらう。「花中心にしますか?人中心にしますか?」と聞かれ「もちろん、花中心でお願いします!」と言う自分に吹き出す。

西野越までスナップを撮りながら登り上がる。すれ違う人に「どこから登って来たのですか?」と聞かれた。どうやら最短の東屋ルートで花見に来る人が、益々増えたようだ。

金泉寺は人も花盛りだった。信者の方、登山者、花見客で溢れている。余りの混雑に、お昼を食べる場所を物色していたら、画家のTさんがおられて、御開帳された寺の参拝を勧められる。お賽銭をいれ、修復された千寿観音の厳かな姿を拝むことができた。賑やかな人々の中に昔の山友「ガッちゃん」と遭遇し、ご一緒させてもらう。手話のお仲間3人と来ていた。私がお弁当を食べて、次にメロンパンをかじっていたら、その中のお一人が「今、お弁当食べたでしょ!それなのに、またパンを食べるの!」と怒られた()。そうです、私は大食漢なのです。

ガッちゃんのニックネームは、コミックの「アラレちゃん」に出てくる、可愛い力持ちのキャラだが、「お宅の息子がつけたあだ名だ」と聞いて驚く。

そんなこと、すっかり忘れていた。彼女は、金泉寺名物管理人だったおばあちゃんの、面倒を良く見ていた。冬用の薪集めの手伝いや、荷揚げなど色々と尽力していた。管理人をやめてからも、温泉に連れていったり、頻繁に面倒をみていた。

大村山岳会のWさんにも会った。先日のレスキュー研修会の話をされていた。

「最近来てないね。」と言われたが、どう考えても私はレスキューされる方で、研修会に参加しても、何の役にも立ちそうにない。せいぜい撮影班だろう。

多良岳山頂まで、ガッちゃんと二人で登る。山友と4才の息子と登った昔を思い出して懐かしい。息子が上に乗り写真を撮った大木の切り株は、朽ち果てながらも、まだ残っている。樹齢を重ねた木々の生命力は、とてつもなく長い。

笹ヶ岳方面の花も綺麗だろうなと思うが、今日はここまでにする。

ガッちゃんと金泉寺で別れ、黒木へ下る。あとは平谷温泉に入り、水を汲んで帰る。温泉は具合良く貸切り状態で、ゆったりと誰に気兼ねすることもなく、オレンジ色の花の余韻を味わいながら汗を流す。今日の一日に満足。