山のワンポイント講座(冬@「凍傷」)

研修担当 窪田

 年末の山ではちょっとしたことから凍傷になり痛い思いをされました。シーズンに合わせたちょっとしたワンポイントを掲載し、安全山行につなげたいと思います。3月には大山山行がありますので「凍傷」をテーマに採り上げます。

凍 傷

 凍傷は、低温が原因で生じる皮膚や皮下組織の傷害である。極度の低温はもちろん、0℃を少し下回る程度の温度でも長時間さらされると生ずる。
 しもやけ(凍瘡)は、寒さのために血行が悪くなり生じる炎症のことであり凍傷とは異なる。
 0℃以下の環境で皮下の血管は収縮を始めるが、これは中枢の体温を逃がさないための保護作用である。
 極度の低温もしくは長時間の寒冷下にさらされるとこの保護作用によって皮下の血行は極端に悪化し、部位によっては血行不全に陥る。
 こうした部位はやがて凍ってしまう。低温に血行不全が重なることによって体組織は凍結し深刻な損傷が生じるのである。
 凍傷は心臓から遠い部位および寒冷にさらされる表面積が大きい部位に最も生じやすい。また積雪期の山や高山では凍傷になる危険性が最も高い。
 好発部位としては四肢の指が最も多いが、耳や鼻、頬などにも発生する。
【症 状】
・第1度:一般的に凍傷は皮膚の変色に加え、灼熱感やうずくような感覚、部分的・全体的なしびれ感、そして時に激しい痛みを伴う。
・第2度:もし治療が行われないと凍傷に冒された皮膚は徐々に黒くなり、数時間後には水疱が生じる。
・第3度:患部や血管が高度に傷害されると壊疽が起こる。最終的に切断が必要となることがある。
・第4度:程度が著しい場合は筋肉や骨にまで壊死が起きる。
 
(参考wikipedia「凍傷」)
 
【ワンポイント】
 冬山で注意したいことはたくさんありますが、凍傷に罹ると行動に制限が出て自力下山できなくなりレスキューを要請する事態になる可能性が出るばかりか、症状が重いと指の切断ともなりかねません。
 注意事項としては、
・外気に直接皮膚をさらさない
・皮膚を濡らさない
・顔面(頬・耳たぶ・鼻)、手先、つま先に凍傷が出来やすいのでジンジンする前に帽子・手袋等で保護し、積極的に動かし血行を良くする
といった対応をとることが必要です。
 具体的な部位ごとのワンポイントです。
▼手:手袋は常時着用が大原則。今は、インナー手袋とアウター手袋の二重のものが多いので、テントを出る前にインナー手袋は最低着けておきましょう。
 濡れたら乾いた手袋に変えるとよく言われますが、今の冬山用手袋を二重にしていたらよほどのことがない限り凍傷にはならないので、一日の行動を終えてテントに入るまで手袋は替えない方がましです。
もし替える場合も、手袋を外す時が一番危なく、外気にさらされるので、予備インナーに替える時でも素手には決してならないことです。
 ピッケルを持って歩くと、手袋をしていても手先がジンジンする時がしょっちゅうあります。ピッケルを持ち変え、ジンジンする指を積極的に動かして血行を良くするよう心掛けて下さい。
 さらにもう一点、アイゼンやワカンを履くときに手袋ではバンドを締めにくいのでつい素手で、うっかりピッケルを素手で、テントポールが外れにくいのでつい素手で、というシチュエーションがありますが、手に金属がピタッとくっついてしまい取るときに皮膚がはがれる…という事態になります。(氷に素手で触るとくっつくアレです)くれぐれも冬は素手にご用心!
▼足:冬は靴下を二枚履くことが良くあります。二枚履いて靴にぴったり過ぎると寒さでつま先がジンジンしてきたとき、つま先を動かせないので血行不良となって凍傷になりやすくなります。
つま先を動かせるゆとりが必要です。
 また、冬山ではアイゼンを靴にしっかりと固定し丸一日行動することが良くあります。靴が弱いと足が締め付けられ、これまた血行不良となって凍傷の原因です。
アイゼンバンドを付けても靴の型崩れしない冬山に適した良い靴を履いて下さい。(夏の軽アイゼンは別ですが)
▼顔:寒いうえに風が吹いているときはご用心(風速1mで体感気温−1℃)。痛い、ジンジンする前に、耳までかぶさる帽子・目出帽で、耳たぶ・頬・鼻を保護しましょう。

 寒さでジンジンする/しないは人それぞれですし、感覚は自分しか判りません。凍傷にならないための知識と行動を身に付けましょう。
 それでも凍傷になってしまったら…山はあきらめ即下山しましょう!!