第2119例会 比叡山

迷走と滑落

下松八重 Ko

昨年に引き続き、クライミング例会は今年も比叡山。
結果からすると全員無事に完遂した例会だったが、波乱もあった。
メンバーも人数は減ったが新規もいないため、“いつも通りの”例会になるはずだった...
10月12日(土) 1日目。
去年とほぼ同じメンバーという事で、今年もベテラン組と若手組でパーティーを別けて登る事にした。
ベテラン組は肩慣らしと安定を考えて、“いつもの”TAカンテへ。
若手組は去年、ナックルスラブ(ノーマルルート)をクリアしたので、同程度の難易度である「失われた草付きルート」を選択した。

赤丸が滑落地点
青丸
が落下地点

リードはベテラン組は伊達さん、若手組は自分が担当。
事故は、登攀開始直後に起きた。
若手組が先に登攀開始、続いてベテラン組が登攀開始したTAカンテ1ピッチ目序盤。伊達さんが滑落したのだ。
スタートから2つほどランニングビレイを取った辺りで足を滑らせ、真っ逆さまに10mほど滑落した。
幸い、怪我は軽い打撲程度で済んだので自己判断で登攀続行。その後は問題なくスムーズにカンテを登頂した。
自分はちょうどリードで登っている途中で、ほぼ高度が同じだったので真横から落ちる様子を目の当たりにすることとなった。
クライミングでは、難所で少々落ちる事はままある事である。実際、自分も今回は難所で一度軽く落ちている。またセカンド以降の場合は、落ちる高さも最小限なので難所であってもチャレンジしやすいため、足を滑らせやすい。
しかし、今回はリードで特に難所でもない場所だったので、正直伊達さんが落ちるという事がかなり意外だった。
後で話を聞くと、スタンスが安定しないまま体重をかけたところでスメアが効かなくなり、足を滑らせたそうだ。リードでザイルが緩めになっていたことも、落差が大きくなった原因だろう。
怪我が軽く済んだのはヘルメットの存在と、落ち方にあったと思う。
体がそのまま、ずるずると擦るように落ちるのではなく、真っ逆さまになって滑落したのだ。結果、背中から岩壁に激突することとなり、ザックが緩衝材となって軽傷で済んだ。
先述の通りクライミングで落ちる事はままある事とはいえ、流石にここまで派手な滑落は久々で衝撃的だった。一歩間違えば、何かが?み合わなければ命を落としていてもおかしくない。
いつものルートだからといって油断禁物である。
さて、怖い話はここまでにして、山行に戻ろう。
ベテラン組はその後スムーズにTAカンテをクリア、若手組はその約1時間強後での登頂となった。
若手組が遅れた理由、それは慣れないルートであった事もあるが、問題は失われた草付きの3ピッチ目にあった。
見ていたルートマップでは失われた草付きは30m-35m-20m-25m-45m-35mの6ピッチ構成だった (これは後から情報が古かった事が判明する)。

古いルートマップ

新しいルートマップ
の情報を元に、3ピッチ目の区切りであろう足場に到着したとき、左右を見てもビレイポイントが無い。
あるのはあからさまにピンが刺さっていたであろう穴が2つ空いているのみである。
この時、リードしていた自分には次のピッチまで届くか自信がなく、右上に見えている3KNスラブルートのビレイポイントが眩しく見えた。そこで、ルートを変更。
3KNスラブに移行することにしたのだ。後から考えれば、20m-25mのルートなのでザイルは足りるはずであり、そのまま行けば失われた草付きルートを行くことが出来たであろう。
1ピッチ目で滑落を目撃したこと、自分も1ピッチ目の難所で足を滑らせた事で弱気になっていたというのは言い訳だろうか。ともかく、3ピッチ目から3KNスラブに移行、そのまま3KNスラブの4ピッチ目にトライする事とした。
しかし、ここでも古いルートマップとの差でルートミスをする結果となる。3KNスラブはノーマルとスーパーに分かれているが、このとき自分が見ていたルートマップでは1ルートのみだった。
そこで、自分は見えている右側のルートを選択、4ピッチ目のテラスを右から回り込む形で上がったが違和感を感じていた。テラスは右から回り込むのではなく、左から回り込むのが正解ではなかったか...?
何とかテラスに上がったが、すぐ左にもう1つビレイポイントが見えているので、正解はそちらではなかったか...?
しかしてそこは既に岩壁の途中であり、上にルートは見えている。違和感を覚えつつ、ルートも見えているし登るしかないと覚悟を決めて登りきった。
下ってからの反省会で、若手組は失われた草付き~3KNスラブスーパールートに行ったのであろうという結論に達した。
クライミングでは、ルートミスの結果二進も三進もいかなくなる可能性もあり、リードの責任である。登りきったとはいえ、事前の情報が完璧に頭に入っていなかった事、新しい情報と古い情報の判断不足には素直に反省である。

懸垂下降
下りは別パーティーに教えてもらったルートを懸垂下降で降りることにした。
懸垂下降するのは、歩くよりも早くザイルの取り回しの練習にもなるはずだった。
結果的に下山が遅くなってしまったが、その分経験になったといえるだろう。
1日目は滑落にルートミスと、反省点の多いクライミングになった。

10月13日(日) 2日目。
伊達さんが前日の負傷の影響もありリタイア、若手組でまだリード経験の少ない2人にリードを経験してもらおうとチームを2チームに分けた。
1チーム目は下松八重親子、2チーム目は橋口・今泉ペアで一応今泉さんにリード経験がある第1スラブを行く事にした。
第1スラブは流石の人気ルートで、スーパールートを行く別パーティーもいたので全体としての進行はゆっくりなものになった。とはいえ、登攀自体は順調に進んだ。
自分も久々(おそらく10年ぶりくらい)の第1スラブで、思い出しながら楽しんで登ることが出来た。
ホールドも分かりやすく、クラックやスラブを進むルートなので、やはり安心感がありつつも楽しめる良ルートであると言えるだろう。

ちゃんちゃん焼きと冷奴
この日は早めに完了したので、温泉と買い出しに行くことにした。
日之影町の豆腐を求めて、日之影温泉駅近くのAコープへ。
しかし目的の豆腐は既に売り切れ、せっかくなのでお店の人に教えてもらった豆腐を食べ比べする事にした。
どれも三者三様の美味しさで、どれが好みかなどの話に花が咲いた。
今回の行程では全日菅原公民館に泊まったが、水とガスの心配をしなくていいのはとても有難い。
同じく公民館に泊まっていた他のパーティーと取り付きで出会ったり、話題に事欠かないのも楽しいポイントである。
帰るまでが遠足。ただ登るだけでなく、怪我無く無事に帰るまでが山行である。
今回はそのことを実感した山行であった。
山に入るという事は、リスクも承知の上である。だからこそ楽しい部分もあるが、今一度安全には気を付けようと思う。
コースタイム:
1日目(10/12)
 8:30 登攀開始―12:00 TAカンテ登頂--13:30 失われた草付き~3KNスラブスーパー登頂--17:00 下山
2日目(10/13)
 8:40 登攀開始- -14:40 全員登頂--16:00 下山
参加者:
CL:下松八重K、伊達、今泉、下松八重J、橋口    計5名