第2044例会 鉾岳~比叡山
下松八重 Ko
屋久島.それは今年の春山の目標であった。しかも計画としては昨年に続いて2回目。今年こそはと意気込んでいた我々、しかし、GWまであと10日を切った頃、天気予報に並ぶ雨、雨、雨……
泣く泣く屋久島は諦め、GW後半で晴れ間の狙える5月1日を見計らって行動可能な山域を選ぶ事とした。そこで候補に挙がったのが比叡山だった。
当初予定していた4/29~5/2の内、天気が持ちそうだったのは4/30と5/1の二日間。4/29と5/2を移動日として、岩の乾き具合を見ながら雌鉾岳、比叡山の順に二日間でアタックすることとした。
4月30日(日)
庵で目覚めると小雨が降っているが、昼前までには止む予報。流石に岩を攻めるのは断念して、サブプラン通り一般登山道で鉾岳に登ることとした。幸い、行動開始時には雨も上がっていて、少し肌寒いくらいの行動しやすい陽気であった。出発から40分ほどして、雌鉾岳の取り付きに到着。休憩しながらルートマップを広げ、確認しながら次に向けて想像を巡らせた。
滝見ルートという沢沿いを進む道が出来ていたので大滝を眺めたり、パックン岩で写真を撮ったりしながら上を目指した。取り付きより上はかなり傾斜がきつく、足元には注意が必要だ。そのまま登ると鬼の目林道に出るが、その手前で右にそれると雌鉾の一枚岩を一望できるビューポイントにたどり着くことができる。少々迷いながらもビューポイントに到着し、先ほど下から見たルートを上から確認しながら昼食とした。その後は雄鉾岳・雌鉾岳それぞれに登頂して、時間も来ていたので下山とした。下山中は天気も良く、翌日のクライミングへの期待に胸を膨らませていた。
5月1日(月)
前日の夜に相談して、今回はいつもの第1スラブやTAカンテではなく新しいルートに挑戦する事にした。
目指すはナックルスラブ・ノーマルルート、全6ピッチ、スラブ壁を主としたⅣ~Ⅴ級で構成される中級者向けのルートである。「宮崎県の岩場」によると核心部は3ピッチ目と5ピッチ目、我々は5人なので3人と2人のチームに分かれて登る事とした。
自分は2人チームの1・3・5ピッチ目のリードを担当。ここでは自分の所見を述べることとする。
初めてのルートなので慎重にルートを確認しながら登っていく。比叡山はピンとピンの距離が遠く、10m以上ピンが無いこともざらであり、リードにはいつも以上に緊張感が漂う。
1ピッチ、2ピッチと順調に登って、問題の3ピッチ目。ここは20mほど直登した後、大きな岩の下のスラブ壁をトラバースするルートである。ひとまずトラバース手前まで到着し、今から挑戦する右手に目をやった。
そこにはホールドの小さいスラブ壁が(前日の雨の影響か)、上部の岩の隙間から水がしみ出して濡れた状態で横たわっていた。
既に3人チームが先行しているので、少なくともいけるはずだ!と気合いを振り絞る。比較的濡れていないわずかなスタンスに足を掛け、にじり寄るように攻略していく。 (赤丸がホールドとスタンス)
もし落ちたら…という事を考えてしまうと本当に落ちるので、目の前の岩と自分の手足に集中する事だけを考える。トラバースした後は少し藪になっている所を少し上がれば3ピッチ目終了となる。
ビレイポイントは藪を抜けた先、木の上にリング付きボルトがあるのでそこを利用した。
4ピッチ目はなんと途中のピンが無い。幸い難易度は高くなく、一定の技量があれば落ちる事はほぼ無いだろうが、それでもピンが無いというのは心細いものがある。
5ピッチ目で再びリードを担当。ここもホールド・スタンス共に小さいスラブ壁でバランスを取りながら壁に張り付くことになる。核心部は2つ目と3つ目のピンの間.2つ目のピンからトラバース気味に左上を目指すのだが、頼りになる(頼りになるとは言っていない)ホールドが遠い。
自分の場合は手を目一杯伸ばして次のホールドを掴む場面があった。自分は平均より身長が高いので(178cm)、おそらく別の回答があったと思われるが、自分の技量ではリーチに頼る他なかった。
6ピッチ目は15mしかなく、もはや整理運動といっても良い。
完登するとナックルピークの上に出て、クライミング特有の足元が抜けた素晴らしい眺望が目に入る。この登り切った時の感動はどの岩に行っても同じで、決して人工壁などでは味わえないものだと実感する。今回は特に歯ごたえのある3・5ピッチ目もあり、感動も一入であった。
下りはいつもの登山道を下っていつもの千畳敷で集合写真をパシャリ、最後に祠にお参りをして、お互いを労い下山した。
今回の山行では、宿泊先が庵と菅原公民館だったので食材も現地調達して広々とした空間で楽しい夜を過ごすことができた。
特に庵では三沢さんや東京から来たパーティと憩いの場を設ける事が出来た。
計3泊の食事は皿うどん、鳥鍋、焼きビーフンなど、電気が使えるということで、O塚さんが持ち寄ったコーヒーメーカーも大活躍であった。
比叡山は宿泊場所、取り付きまでの距離など色んな意味で行きやすい山であることを再確認出来た。
雌鉾岳も拝めたし、次は雌鉾岳に
挑戦したいという気持ちが湧いてくる。そういう意味で、今回のナックルスラブルートはいい練習になったと感じた。
コースタイム:
4/30 鹿川キャンプ場 10:25~11:08雌鉾岳取り付き~12:22ビューポイント (昼食)~13:20雄鉾岳~13:55雌鉾岳~15:41鹿川キャンプ場
5/1 比叡山登山口 7:41~8:20取り付き~13:05ナックルピーク登頂~14:03千畳敷~14:10 比叡山登山口
参加者:
CL:下松八重Ky 、SL:窪田、三田T、大塚、下八重松Ko 計5名