第1973例会 冬山
北アルプス霞沢岳西尾根、上高地
窪田
▼12/28(火)夜、前日の数年来の全国大寒波・大雪を奇跡的にやり過ごし、長崎を出発する。
三田さんの車は初のスタッドレスタイヤ装着で道中の雪にも不安なし。高速道路の積雪規制も全て解除され、皆の日頃の行いが良いのか、2021年最後の運を使い果たしたのか、まさに幸運である。
▼12/29(水) 平湯温泉までは予想以上の積雪と圧雪された道路が続きスタッドレスが大活躍。安房トンネルを抜けると積雪がずいぶん減り7:20坂巻温泉に到着。前泊して茨城から参加の田アさんとはここで合流。田アさんは初の雪山で、アイゼンの寸法を合わせる等して出発する。気温はマイナス7℃。結構寒いので、自分は凍えないよう足用カイロを入れておく。
釜トンネル入口で長野県警山岳救助隊指導員に登山届けを出し入山指導を受ける。
ここ数日の大寒波で積雪が増え、数日前とは様相が違うとのこと。数パーティが入山しているので新型コロナ感染を避けるためテントはなるべく離して設営することや、天候は悪化傾向なので無理しないようにとの注意あり。
長い釜トンネルと、6年前は工事中だった上高地トンネル(2016年7月開通)を抜け、しばらくすると「国土交通省・松本砂防工事事務所」と書いた看板が見え右折。電線の真下が西尾根取付きとなる。
先行パーティの足跡があるので登りやすいが前回より積雪は多い(30cmぐらい)。
最初の急登で田アさんが「大丈夫ですか?行けますかね?」といきなり弱気発言。初めての冬山なので不安がるのも仕方ない。え〜どうしよう、という声もほぼ無視し「ほら、両手で笹を握って。ロープをつかんで。」と下から声を掛けてとにかく登る。(笑)
どんどん雪面が硬くなって傾斜も出てきたので、つぼ足・ストックからアイゼン・ピッケルに切り替える。
田アさんはアイゼン・ピッケルが初めて。練習なしでいきなり本番というのは少し気の毒だが、アイゼンを引っかけないように歩くこと、ピッケルの使い方を講習して実地で登る。
途中、下山してきた単独行者に上部の状況を尋ねる。4人ほどのパーティと、女性1人の単独行の2組がいるらしい。2100m付近のガケは上部に新しい残置スリングがついていて懸垂下降したとのこと。
1950m地点のやや広い尾根を一日目のテン場の目標としていたが、天候はどんどん悪化し風雪が激しくなる。テン場適地もあまりないので、1740m地点(6年前、最初にテントを張ろうとした所)にテントを張る。
南側から吹き上がる風が強く、テントの入口は北側。雪を踏んで平らに均そうとするが、パウダースノーで全く踏み固まらない。スコップで高低を均してテントを張る。
今回持って来たテントは、2021年度購入の新品吊下げ式4人用テントで設営は楽ちん。大人4人+冬山装備は少し手狭なので、6年前同様、使わないものを詰めたザックをテント外に出し、ツェルトでくるむ。
整理整頓をしてガスストーブを点けると氷点下から一気に暖かくなる。落ち葉や枯れ枝混じりのパウダースノーを溶かし、コーヒーフィルタで漉して水を作る。パウダーなのでやや効率が悪い。
夕食は食当の大塚さんセレクトのフリーズドライ食品。大豆タンパク由来の合成肉など、最近のフリーズドライ食品の進化には目を見張るものがある。
各自担ぎ上げたビール・ワイン・日本酒などで豪華なただし静かな酒盛り。よく冷えていて美味。壊れたレコードのように同じ話が回り、酒場放浪記のような霞沢岳西尾根の夜は更ける。
▼12/30(木)5:30起床としていたが、雪が降っていて暗いのでそのまま6:00まで寝る。ゴソゴソ起きて今日どうするか話し合う。天候は悪く、登ってもしょうがないのでさっさと小梨平に行くことにする。
アルファ米のごはんとフリーズドライ味噌汁で朝食をとり、テントを撤収して下りる。夜中に10〜20cmぐらい積もったようだ。
ラッセル訓練 |
取り付きまで戻る |
下りながら田アさんにラッセル歩行、ワカン歩行などを講習。持って来た装備は全て使用できて良かった。講習会でゆっくりしても登り3時間を2時間弱で取り付きまで下る。
それから少数の登山者以外人気のない大正池ホテル、上高地帝国ホテル、バスターミナル、雪道を辿って小梨平まで行く。
凍てつく風雪の中の河童橋は、なんともしんみりした風情。
雪の河童橋 |
大正池 |
晴れていれば後にそびえる奥穂が白銀で見えたはずだが、風雪にたたずむ風情も良い。
初めての光景で感激ひとしおである。
パウダースノーが梓川に舞い、湯気が立っているようである。
小梨平はテントが一張り見えるだけで貸し切り状態。
風が吹き荒れるので我々は冬季トイレ横の吹きだまりに風を避けてテントを設営した。
今宵もワイン・日本酒・焼酎で夜は更けていく。
▼12/31(金)早い家路につくため3:00起床、暗い中5:19小梨平を出発する。昨晩からも雪が降り積もり前日プラス10〜20cm程か。ふかふか雪の中、ワカンを着けてひたすら歩く。
大正池ホテルで大休止。四季を通じ人生初めて湖畔(池畔?)まで下り写真を撮る。有名な立木も雪に霞んでうっすらとしか見えない。
8:28ようやく釜トンネル中ノ湯入口に到着。指導員から「小梨平からですか。大変でしたよね。」とねぎらわれる。天気が悪く、入山者は少なかったようだ。
あとはアイスバーン状の国道158号線を滑らないように30分ほどトコトコ歩き坂巻温泉に戻る。
坂巻温泉に入浴予定だったが時間が早かったので、田アさんおすすめの“ひらゆの森”に、平湯バスターミナルで土産を買って入りに行く。
ここにはいくつもの露天風呂があり、雪見でサイコー(ドクターX大門未知子??)。極く短時間の入浴だったので、新型コロナがまた落ち着いたらぜひゆっくり行きたいものである。
▼最後に。今回の冬山は、バリエーションながら比較的入山しやすく、登頂可能性も高い霞沢岳西尾根をビギナー参加の冬季入門ルートとして設定した。
天候悪化で残念ながら登頂はできなかったが、冬山装備(アイゼン、ピッケル、ワカン)の使い方などの実地講習はでき有意義だった。
地球温暖化による気候変動がいわれているが、原稿を書いている今日2022年1月13日前後も北海道・日本海側で豪雪のニュースがずっと流れていて、何となく地球全体が変な方向に向かっているように感じられる。
新型コロナ・オミクロン株も国内第6波の見えないピークに向かって毎日感染者が急増している。
今回は、現地に入って静かな上高地を歩き、雪山気分を味わえただけでも幸運である。
参加したメンバーの方々、ありがとうございました。
<最終日:上高地トンネル上高地側にて全員集合>
初めての冬山
田ア
長崎山岳会に入り、いろんな山を経験させてもらいましたが、冬山だけはまだ未知の世界でした。それは、知識も技術もない私が足を踏み入れてはいけない領域だと思っていたからです。
しかし、冬山に興味はあったので、去年11月頃に声を掛けていただいたときはとても嬉しくて、二つ返事で「行きます!」と答えました。
今回、私が感じた率直な感想を列挙すると、
@冬山って荷物重い。
A歩きにくい。
B急なところも普通に登る。
C冬山って夏山と全然違う!(当たり前)
です。これだけを見ると、なんだかマイナスイメージですし、辛かったんだろうという印象を受けますが、私はこの2日間、とっても楽しかったんです!(^^)!
正直、弱音もたくさん吐きましたが、これは全て自分の努力次第で解消できることです。
以前、長崎山岳会のYさんに、「80歳過ぎても山を歩くためには何をすればいいんですか?」と質問したとき、「いろんな種類の山をやった方がいい。岩も、沢も、冬山も。」と言われました。
今回の冬山で私は、その意味が少しわかった気がしますし、これから自分のやるべきことが見えてきたような気がします。
これから先もたくさん、いろんな山に行くと思いますが、この2日間は絶対に忘れません。
(合流前日)
朝5時に自宅出発。電車とバスを乗り継いで坂巻温泉へ。29日に、長崎から車で来る皆さんと合流するため前泊します。坂巻温泉は山あいにぽつんと一軒だけある温泉宿で、とってもいい雰囲気。
午後3時のチェックイン時間より30分早く着きましたが、大丈夫ですよ〜と言っていただき、チェックイン。
6畳ほどの部屋に通されました。夕食までの間、温泉に入ったり、荷物を整理したり、ビール飲んだりしてのんびり。前泊っていいなぁ。明日の天気はどうかなぁとか、足引っ張らずにちゃんと登れるかなぁとか、緊張とワクワクが入り交じったなんともいえない気持ちになって落ち着きません (>_<)
とりあえず夕食の時間になり、食事処に行くと、私の他にお客さんは1名!どうやら常連さんのようです。年末ってやっぱり少ないのでしょうか?コロナ禍の影響かな?
どちらにしても、ほぼ貸し切り状態でした(^o^)。ちなみに、夕食には坂巻温泉名物の熱々の鯉こくが出ました。
(入山〜下山まで)
朝食をとっていると、長崎ナンバーの車が駐車場へ(^o^)久々の再会でとても嬉しい気持ちになります。なんか、落ち着くなぁ。冬山頑張れそうだ!!…しかし、まだこのときは、脳天気な私でした(@_@)
共同装備をザックに無理矢理押し込み、いざ登山口へ!
釜トンネル入口では、長野県警山岳遭難救助隊の方が登山相談所を開設されていました。
男性の中に混ざって、女性隊員2名を発見!リーダーが登山届を出している間、女性同士の山談義。女性隊員は、「私達もこの間、霞沢岳に登ってきたんですよ!」といって写真を見せてくれます。え〜こんなところ歩くのか…私行けるかな…と急に不安が襲ってきます。
女性隊員の「お気をつけて!」という言葉に励まされ、再び登山口を目指します。これからもずっと山を楽しむために、安全第一だなぁと再認識します。女性が頑張っている姿は、励みになります(^^)
釜トンネル、上高地トンネルを抜け、霞沢岳西尾根の取り付きへ。いきなり急斜面(@_@)
えー、15キロオーバーのザック背負ってるのに、こんな斜面登れるんですか…弱気です。
見よう見まねで登り始めますが、すぐにふくらはぎがパンパンに。「クライミングと一緒!つま先で…」とアドバイスを受けます。そう、頭ではわかるのですが、体がいうことを聞かないのです(+_+)
這い上がるようにしてなんとか登ります。これまでのルンルン気分が、一気にどん底へ(笑)この一瞬で、「やっぱり私は来るべきではなかったのではないか」「これからどうしよう」と、本気で思いました。
その後、人生初のアイゼンをつけ、人生初のピッケルを使い、見よう見まねで歩いてみます。
こんな初心者がこんな場所にいていいのかと不安に思いながらも、歩きながら私は考えるのです。長崎山岳会に入ってから、夏山アルプス、岩登り、沢登り、いろんな山を教えてもらいましたが、全て実践で覚えていったことを!岩も、沢も、やったことないのにいつもいきなり(笑)そして、いつもちょっと厳しめなチャレンジが多い(笑)でも、やらなければならない状況に立たされた方が、人間伸びると思うんです。
やるしかないから。それはすごくありがたいことで、周りに全力でバックアップしてくれる先輩方がいるからこそ、私は今、ここに立てているのです。この環境を作ってくれた皆さんに感謝。そう。これが、長崎山岳会のやり方だ!!
といいつつ、活動中は何度も弱気になりました。それでも、Sさん、Kさん、Oさんは優しく励ましてくれました。何度も弱音を吐いて、すみません。今度行くときには、もっと体力をつけて、楽しく歩けるように努力しておきます!!そして、今度はワカンをつけても転ばないようにします!笑
また、人生初のテント泊は、とっても楽しかったです。荷物が重いと言いながら、ビールとワインを1本持って行ったのですが、これが大正解〜。
雪の中に張ったテントで飲むお酒は最高過ぎました。なんという贅沢…。日本酒も(^^)Sさん、ありがとうございました!
また、雪から水を作るのも初めての経験でした。
テント泊の楽しさを味わい、今年は夏のアルプスにテント泊で行こうと思いました。
今回、初めての冬山、といっても頂上まで行くことはできませんでした。私の今の体力と技術では、例え天気がよかったとしても厳しかったかもしれません。
でも、きっとそれは、また来てねっていうことだと思います。私はどうしても、青空と雪山の景色をこの目で見たいです。その景色を見るため、これからも努力して、絶対に冬山リベンジ登山に行きたいと思います。
コースタイム:
12/28(火) 窪田宅18:30=多良見IC=(長崎道・九州道・山陽道・新名神・東海北陸道)=
12/29(水) =5:45飛騨清見IC=7:20坂巻温泉8:55〜9:50釜トンネル〜10:40霞沢岳西尾根取付き13:30〜西尾根1740m
12/30(木) 6:00起床 西尾根1740m 9:15〜11:00取付き〜11:38大正池ホテル〜12:20上高地帝国ホテル〜13:00河童橋〜13:06小梨平
12/31(金) 3:00起床 5:19小梨平〜5:30河童橋〜6:04上高地帝国ホテル〜7:02大正池ホテル7:18〜8:28釜トンネル〜8:52坂巻温泉=飛騨清見IC=(東海北陸道・新名神・山陽道・九州道・長崎道)=大村IC=多良見IC=1/1(土)1:50窪田宅
参加者:
CL:窪田、SL:三田T、大塚、田ア 計4名