第1826例会 冬山 南アルプス

甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳)

三田 T

 2018年末、どの冬山に入ろうかと思案した結果、甲斐駒・仙丈に行くことにした。
 というのも、昨年、脚の酷使しすぎで右膝の半月板を断裂してしまい、治療とリハビリにより違和感は小さくなってきたものの、20キロ超の荷物を背負って全行程を縦走するコースにはまだまだ不安があったことから、北沢峠までテント等を荷揚げし、そこから2つの山をピストンする計画なら何とか行けるのではと考えたからだ。
また、特に仙丈ヶ岳は、18年前と5年前にも計画したが、暴風等によりいずれも登れなかった山なので、宿題を片付ける意味もあった。
ただ、出発一週間ほど前から、年末は第一級の寒波が襲来し、特に12月28日(金)は日本列島大荒れとの予報。
長崎から現地までのアプローチが長いので、高速道路の通行止めが一番不安で、山域を変える案もあったが、出発直前の現地の天気予報は12月31日(月)から回復見込みとの情報だったので、サブリーダーの窪田君と相談した結果、とにかく時間がかかっても出発しようということになった。
 12月28日(金)仕事納めの日も早々に定時どおり役所を退庁、自宅で大塚さんと合流し窪田邸へ向かう。
窪田邸にはすでに峯さんも到着しており、三田車に4人分の荷物を積め20時に出発する。
長崎自動車道、九州自動車道、中国自動車道と北上するにつれ外気温もだんだん低くなってきて、遂に中国道の美祢西IC先が雪のため通行止めとなり、下関JCTまで戻り小野田経由で山陽自動車道に経路を変更する。
途中、空には月も出ていたので、この先、雪の心配はないかなと思っていたが、案の定、関ヶ原付近でどんどん雪が降って来て、融雪剤の効果が間に合わないほど道路が白くなってきた。
幸い、スマホの道路情報では通行止めとはなっておらず、スピードを落として慎重に車を転がす。
途中、ガソリン補給に寄った養老SAは、融雪剤を撒いておらず、路面は一面真っ白でここが一番怖かった。しかし、中央自動車道に入ると、先ほどの雪が嘘のように積雪はなく、戸台の駐車場(標高1,050m)までにチェーンを巻くこともなく、ほぼ予定どおり12月29日の9:05に到着する。
 12月29日(土) 5年前は雪が積もっていたが、今年は積雪が全くない河原を黙々と歩く。
ただ、寒波の影響で非常に寒く、八丁坂の登りにかかっても汗をかくこともなく、体が冷えてしまうほどである。
約6時間かかって北沢峠のテン場(1,980m)に着く。寒波の影響もありテントの数はさほど多くない。
早速テント設営にかかるが、風が非常に強く設営に苦労する。
雪はサラサラしているので竹ペグは効かず、石で張綱を固定しようとするが少々の大きさの石では風で吹き飛ばされてしまうため、特大(20キロ超)の石を何とかみつけテントを固定する。
風除けのブロックも5月の雪のように厚いブロックが切り出せず、薄いブロックを積むが強風で何度も崩れてしまう。冷え切った身体をようやくテントの中に入れたのは設営から1時間30分後であった。
 一段落したらガスストーブを点火し、ビールで乾杯。寒くてもこれだけは欠かせない。
 焼酎を飲みながら翌日の行動を思案するが、外は相変わらずの強風。12月30日は甲斐駒ヶ岳だが行けるところまで行ってみようということになる。
 ここで、大塚さんから思わぬ告白。左手の指が紫色に変色しジンジンするとのことで、明日の甲斐駒には登らないとのこと。
5年前も同じコースを右手指凍傷で断念し、今回は細心の注意を払っての行動だったと思うが、寒波の影響であまりに気温が低すぎたのか…、残念。
 12月30日(日) 未明にはおさまっていた風が朝方にはまた吹き出す。
身支度を整え、テントキーパーの大塚さんを残し7:00に北沢峠を出発する。寒さのせいか、脚がまだ万全でないのか、行動食とテルモスしか持たないのにピッチがあがらない。
仙水小屋でアイゼンを装着し、仙水峠から先の稜線ではものすごい風の中、耐風姿勢を取りつつ一歩一歩進む。
ようやく駒津峰(2,752m)に辿り着き、強風の中、単独行の兄ちゃんから写真を撮ってもらう。
気温マイナス15℃。ここから先の甲斐駒ヶ岳までは岩場の通過もあり、風速20メートルを超える条件の中では危険と判断し、本日の行動はここまでとする。
他のパーティも皆、駒津峰で撤退。
せっかくなのでテン場までは、雪景色や岩に張り付いているツララなどをカメラに納めながらゆっくり下山し13:00 前にはテン場に着いた。
仙丈ヶ岳へ向かったパーティも強風のため小仙丈で敗退したそうだ。
時間も早いので昼から焼酎のつまみにと栄養を補給しながらそのまま夕食に突入。翌日の好天を期待しながらシュラフに潜り込む。
 12月31日(月) 昨日と打って変わって風もなく登山には絶好の天気。
5:40にテン場を出発し、大滝の頭の手前でアイゼンを着け、樹林帯を抜け稜線に出る。
18年前は稜線に出たところで暴風のため一歩も前に進めなくなり敗退したが今回はそよ風でルンルン気分、脚の調子も良い。
小仙丈ヶ岳(2,855m)には8:45着。
ここからは南アルプスの女王たる仙丈のカールを眺めながら爽快な気分で風紋ができた雪稜を進むと、遂に仙丈ヶ岳(3,033m)に達し、18年前の宿題をようやく解決。
山頂からの甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳、富士山、北岳、中央アルプス、北アルプスの絶景を堪能する。
20分ほど山頂で休憩した後、どんどん下りテン場へ戻る。
今日もテントキーパーの大塚さんから山小屋でおでんを売っているという話を聞き、登頂祝いということでおでん2人前(1人前400円)と350mlの缶ビール6本(1本500円)を買い込んで、まだ陽の明るいテントの外で乾杯する。
 1月1日(火) 平成最後の元旦を迎える。起床後、朝食、テント撤収まで2時間と優秀な段取りで北沢峠を後にしてどんどん下り、約5時間で戸台へ戻る。
天気が回復してきたせいか、駐車場は満杯になっていた。
早速温泉ということで、荷物を整理し事前にチェックしていた元旦から開いている高遠温泉さくらの湯(500円)を目指す。
この温泉はアルカリ性で超ヌルヌル、お肌にも良さそうでお薦めである。
5日分の汗を流した後、お土産の地酒をゲットしたいが元旦で店は閉まっている。スーパーなら開いてるのではないかとスマホで検索し、箕輪町のイオンでお酒を仕入れる。
ちなみにここは18年前の山行の下山後にも正月の惣菜を買い込んだ店(当時はジャスコ)であった。
 今回の山行は目指す甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳の2座は登れなかったが、宿題として残っていた仙丈ヶ岳に登れたので満足できる山行であった。
ただ、寒波、強風の日もあり、各自一層の防寒対策が必要と改めて認識させられた山行でもあった。
テントの中では最新の山の装備(特に衣類)が話題になり、ガイドの資格を持つ峯さんからいろんな情報を聞くことができた。
 なお、装備のうち食糧については軽量化の中にも年末年始にふさわしく、年越しそばやお餅、黒豆等を用意してくれた食当の大塚さんに感謝したい。またの機会、頑張りましょう!

仙丈ヶ岳山頂から見た富士山

仙丈ヶ岳山頂から見た北岳
【仙丈ヶ岳山頂から見た富士山】
【仙丈ヶ岳山頂から見た北岳】
コースタイム:
12/28(金)20:00長崎発→12/29(土) 7:47駒ケ岳SAで朝食→9:05戸台駐車場着9:40~15:37北沢峠テン場17:00テント設営終了
12/30(日)北沢峠7:00~7:35仙水小屋7:45~10:30駒津峰10:40~12:40北沢峠
12/31(月)北沢峠5:40~8:45小仙丈ヶ岳8:50~10:05仙丈ヶ岳10:26~13:20北沢峠
1/ 1(火)北沢峠4:37~9:35戸台駐車場。温泉入浴、買い物後1/2(水)00:45長崎着
参加者: CL: 三田T、SL: 窪田、大塚、峯  計4名

冬山 南アルプス感想・テント泊での本格的な雪山デビュー

 昨年の11月中旬、紅葉登山・忘年登山等終盤にはいり自分自身のスケジュール等も余裕がでてきたころ、年末の雪山どこにいこうか思案していた頃「あしあと」12月号が届いた。
パラパラとめくっていたら「南アルプス 甲斐駒ヶ岳&仙丈ヶ岳」の例会の案内が目にとまる。
昨年の夏山で登った南アルプス(甲斐駒&仙丈ヶ岳)の絶景が脳裏に焼き付いている、雪山の景色を想像してはどんな景色に会えるのだろうと興味がそそられる。
ただし、山岳会はテント泊が当たり前の山行計画・・、テント泊可能な装備等はほぼ揃えているが、小生の雪山は冬季営業小屋に宿泊するスタイルであるゆえ、おそるおそるリーダーに電話して意志を伝えるとともに、12月にはいり冬山の装備等一式を我が家の小さな和室に並べてチェックと点検を行いながら想像をふくらませていた。
 12月8日(土) 窪田邸で打合せをし本番へむけての意識合わせを行う。
「行動予定」、「共同装備の分担」、「個人装備」、「食料計画」等でほぼ山行計画の全容が見えてきた。
特に個人装備については、
①戸台から北沢峠、②テント泊、③甲斐駒ヶ岳&仙丈岳 へのアタックのパーツにわけてイメージしながらチェックと点検等を行ない、準備をすすめた。
 これからは、各パーツ毎に感想等含めて想いを報告したい。
1.長崎から戸台まで(深夜高速を使って長野県伊那市の戸台まで)
三田車に4人で20時頃出発は事前打ち合わせで理解していたが、雪山のテント泊・各個人のザックもそれなりの大きさと共同装備等もあり、後ろのトランクに荷物がはいるのかどうかと思っていたが、全員窪田邸に集合すると、三田リーダーが要領よく各自の大きなザックを積み込み、共同装備、各自の雪山装備等隙間にいれて、4人分の荷物、共同装備すべて納まっちゃった。
いやぁーおどろいた。歳の順に運転でどうだろうとの三田リーダーの提案に私は即OK。九州道のなれた運転、たぶん、一番眠くなる深夜に仮眠できるようにとの配慮かなと感謝です。
私の次の登板は予定通りいけば中央道あたりかなと推察した通り東海地区から駒ヶ岳SAまでの運転です。
三田氏、窪田氏の運転の間仮眠させてもらい助かりました。
運転中、バックミラーが見えず、左右のサイドミラーを見ながらの運転には少々?最初は慣れるまで緊張しっぱなし。最終日、戸台から長崎帰還は昼間の運転で来た時と比べて快晴のなか中央高速からの南アルプス、中央アルプス、伊吹山等の雄姿を見ながら長崎へ無事帰還できた。
2.戸台から北沢峠
戸台9時40分出発~北沢峠幕営地に15時30分着、約6時間の歩きであった。
今回の山行でこのルートを歩くのは初めてで情報等を収集していたが戸台駐車場から丹渓山荘跡までの約7キロの歩き、さらに八丁坂を登り北沢峠に至る。
河原歩きでは岩がゴロゴロで歩きはさほど問題なかつたが、河原の特有の風は冷たくダウンブロウ的に身体を冷やされてなかなか暖まらない。
八丁坂の登りで足取りが重くなった。太ももが冷えていて筋肉がピクピクしだし無理がきかない。
何度も立ち休憩をとりつつ、なんとか北沢峠にたどり着いた。河原歩きを甘くみていたのかも? 
下山の時はその反省を活かして歩いた結果快適に歩けた。それにしても戸台河原歩きは長かった・・・・。
3.テント設営とテント泊等
幕営地に到着するやいなや設置場所等がきまると早速テント設営です。
最初のことは今まで経験した段取りで本体の設営等をすませた頃から横殴りの強い風が容赦なく吹き付ける。
風も突風でそれも冷たいこと・・・いっきに体温も手も低下していくなか、全員防寒具等身に着ける時間もなく、全員で手分けして必死にテント設営にかかる。
冬山テント泊の厳しさに衝撃をうけカルチャーショックをうけた。
私はセットした本体のテントを飛ばされないよう必死に押さえていたが力加減も必要で何度もうきあがり、今夜の宿はどうなるのかな?・・・・と脳裏をよぎる。
フライシートをかぶせ、四隅に大きな岩を持ってきて紐で固定していきます。
皆さん修羅場を経験してきているのでさすがです。(小生は割りばしに繋ぎ雪の中に埋め込んでフライシートをはる経験はあったがそんなものではテントが吹っ飛んでしまいますね・・)
さらに、テント周りにスコップと雪鋸を使ってブロック塀を作ります。隣のかたも立派な塀を作っています。
積み重ねては突風で崩れていきます。それの繰り返しで低い塀になりましたが、あたりも暗くなっており、リーダーのテントの中に入ろうとの声に一斉に大きなザックを入れ込み食事の準備にとりかかる。
いやぁ、テントの中の暖かさにはとにかくホッとした。
当初計画では、脇にツエルトを張り荷物置き場に予定していたがそんな時間もツエルトも張れる状況でない。
4人用のテントのなかにそれぞれ大きなザックを隅においてよく寝ることができたなぁーと。また、シュラフに潜りこんだ際2リットル入りの水を抱いて寝るよう指示があり・・冷たい水を抱いて? と思ったがテント内でも朝方にはカチカチに凍るんだよと聞いて、ほおぉーなるほどと思いシュラフに入れ込む。(寝ている間に水漏れしたら大変だと思いチェック)
テント内での食事は食料担当がいろいろ知恵をしぼり準備してきてあり美味しく頂けることが出来、プチ正月気分も味わえて本当にありがとう。
4.甲斐駒ヶ岳&仙丈ヶ岳へのアタック
年末は日本列島に大寒波襲来の予報、ヤマテンからも温度・風等厳しい情報が送られてきたので装備等含めて慎重にセレクト&準備して臨んだ。
[甲斐駒ヶ岳]
12月30日(日) 甲斐駒ヶ岳へのアタックです。
夏山で二回登っていたのである程度イメージは出来ていたので仙水小屋まではアイゼンなしで、程よい雪である程度踏み固められていたので快適な歩きです。
また、樹林帯のなかで風も感じることなく進んでいく。仙水峠に着くと摩利支天がお出迎え、ここまでくると甲斐駒ヶ岳へ登っている雰囲気を感じとることができる場所、好きです。
仙水峠から駒津峰までの標高500m弱であるが、急登でそれなりにタフな登りである。
高度を稼いでいき展望が開けてふり返ると「北岳、鳳凰三山後方に富士山」も姿が見え始める。
駒津峰手前の森林限界をこえたあたりから強い風にはばまれ慎重に駒津峰まであがる。
風速計は20m越え、温度-15度、体感温度は約-35度以下に値する。
前方には花崗岩に覆われた甲斐駒ヶ岳の雄姿が飛び込んできた。
後ろを振り返ると日本のワン・ツウ・スリーの「富士山・北岳・間ノ岳」さらに「鳳凰三山」、明日アタック予定の「小仙丈ヶ岳、仙丈ヶ岳」も夏山から衣替えした南アルプスの女王と称されるがごとく、純白のドレスを身にまとったような山容の絶景を目に焼き付けた。
気象条件等を勘案し下山の判断をしたリーダーの冷静な行動を垣間見ることが出来たことは、私のこれからの山登りに生きていくだろう。
[仙丈ヶ岳]
12月31日(月) 5時30分ヘッドランプ頼りに出発する。
暗闇のなか北沢峠登山口から大滝の頭を目指す。
途中樹林帯の隙間から空が焼けてきたのが見えると気持もたかまります。
大滝の頭の手前あたりでアイゼンを装着し小仙丈ヶ岳を目指す。
ひたすら高度をあげていき森林限界を超えたあたりから後方に花崗岩に覆われた「甲斐駒ヶ岳」の山容が姿を見せ始めた。
空は雲ひとつない青い空、気温-10度、風4~5mと雪山としては最高の条件のなか順調に高度をあげ小仙丈ヶ岳のピークに立つ。
まず目に飛び込んできたのは360度の絶景です。特に「大仙丈ヶ岳~仙丈ヶ岳の稜線と仙丈カール」の山容は冬山の醍醐味を味わうことが出来感動した。
昨日悪天候により駒津峰で下山した「甲斐駒ヶ岳」、「鋸山」その左奥には「八ヶ岳連峰の山々」も素晴らしい。
しばし富士山、北岳を見ながら行動食を補給した後、小仙丈尾根の稜線歩きを楽しみながら仙丈ヶ岳の頂上をめざす。
最後の登りつめでは少々息もあがっていたが山頂に立った時の感激は今でも脳裏に焼き付いている。
しばし思い思い「中央アルプス、北アルプス、八ヶ岳」、当然「南アルプスの山々と富士山」等360度の絶景を楽しむ。
夏山の景色とまた一味も二味も違う景色を目に焼き付けることが出来たことに、パーティー全員にありがとう。
5.その他
今回、本格的なテント泊による雪山への参加を許可していただいたリーダーには感謝したい。
また自分自身反省することも多い。一つひとつ改善し体力アップを行い、今後の雪山山行を楽しめるようにしていきたい。