第1616例会 北アルプス(朝日岳)

子だけの北アルプス


朝日小屋へ向かう

朝日小屋

《1・2日目》 松田 朋子

 憧れの北アルプス。とうとう、北アルプスデビューの第一歩を踏み出して来ました。
▼7/30(火) 出発の何日か前から、食欲が無くなってきていた。そうか、緊張しているんだ私、ということに気がついた。荷物を入れたり、出したりと準備にもかなり時間がかかる。
いよいよ、当日午前6:00発のJRかもめで出発。長崎駅には、リーダーの田尻博子さん、石川さん、川口さん、碇さん、大塚さん、私の集合である。今回は、メンバー全員が女子である。楽しくなりそうな予感。
ただ今年は、長崎の方は早々と梅雨も開け、東北の方もてっきりそうだと思っていたのに、出発の日、あちらのお天気はぐずついているようだ。何とか晴れて下さい、と祈るような気持ちで列車に乗り込んだ。
 行きの行程は、(長崎→福岡 かもめ)(福岡→新大阪 新幹線さくら)(新大阪→富山 サンダーバード)(富山→泊 普通列車)(泊→北又小屋 タクシー)である。
 乗り継ぎも順調に、列車の旅は続く。これからの期待で胸は膨らみ、道中はおしゃべりに、駅弁・スイーツと大層楽しく過ぎて行った。(最近の研究では、中高年は栄養が足りていないという説がある。との碇さん談で、それは栄養をつけて山に登らなきゃと、豪華版のステーキ弁当を食べる。また、新幹線で売ってくるアイスクリームはとても美味しい。皆さんも機会があったら、ぜひお試しあれ)
 途中、サンダーバードに小松から倉嶋さんが乗り込んで来て、一段と賑やかになった。
富山駅で、沢子さんが合流し全員が揃って、泊駅に着いたのが16:36である。泊駅から予約しておいたジャンボタクシーで1日目の宿泊先の北又小屋を目指した。
タクシーは、申告書に名前を書くと一人千円の助成金が出る。他県からの登山客のお財布に優しい制度だ。リーダーの博子さん、よく調べて下さったなあと感心する。
 北又小屋へ登る山道は、車一台やっと通るくらいの狭い道で鉄の門を開けて入っていく。お天気はどんよりしているし、夕方の時刻だし、狭い長いトンネルはあるしで、すっかり心細くなってきた。最初の、弾むような気持ちが緊張と不安に変わっていった。
 1時間もかからずに、17:30北又小屋へ到着。雨が降ってきた。
北又小屋のパンチのきいたおじさんが印象的だ。初めて管理人のいる山小屋へ泊まったのだが、山小屋のご主人ってこんな感じなのかと少し驚く。とにかく、声が大きい。この日は、地元の朝日中学校の登山行事とも重なり、めったにない満員御礼だという事で、興奮した様子の客さばきであった。
 部屋はお布団を敷くと満杯となる。お布団は、やや湿っているような感じであるが、まあこんなものかと、落ち着く。3人と5人部屋に分かれ荷物を解いてみたり、明日歩く行程を地図で確認したりしているうちに、18:00に夕食タイム。
焼きなすや里芋や豚肉、魚、野菜におじさんカレーと、量もたっぷりある。ほっと一息つける、楽しい夕餉である。(しかし、この時は3日後にまたここに戻って来ることになるとは思う由もなかった。)明日、晴れるかなとのんきな事を考えながら、20:00就寝となる。
▼7/31(水) 朝、4:00に起きると外は霧の中であったが雨は降っていない。やった、歩ける。朝食を早々に済ませ、お弁当を受け取り6:00出発だ。
この日はイブリ山を越えて、朝日岳の下の朝日小屋を目指す事になっていた。1合目〜2合目〜と順調に進む。そのうちに、だんだん空が晴れてきた。
「やっぱり、私達ついてるわ。晴れ女たちだわー。」と喜びながら登る、登る。上からは、朝日中学校の元気な皆が次々と降りてくるのとすれ違う。「こんにちはー!」と、子ども達は元気いっぱい。
引率する先生らしき人たちが何人もいる。しかも、若くてイケメンの山男が多いではないか。さすが、登山県は人材が違うわ〜と感心する。後で、みんなで「何番目に会った、あの人が素敵だった。」ときゃーきゃー話題にする。女子会の醍醐味である。
 8:40、5合目に着く。水場もあり冷たい水を汲んだ。少し、長い休憩にフルーツケーキとコーヒーの行動食を摂る。山で食べると美味しいな。
しばらくすると、遠くの方に見える山が剱岳だと倉嶋さんが教えて下さった。「あれが、名高い剱岳なのだ。」胸がじーんとする。写真を撮っておいて良かった。(だって、晴れた空の下を歩けたのはこの日だけだったのだ。)10合目に11:00到着する。

イブリ山山頂
 ここで、お昼ご飯である。北又小屋特製弁当、初めての山小屋弁当に大満足であった。
それから、しばらく歩くと、夕日ヶ原。以前から観たかった「チングルマ」の花がたくさん咲いていた。「うわー」と、まるで有名人に会えたかのように感激する。木道が出てきたり、雪渓が出てきたりと、これまた「初めまして、北アルプス」と言いたい気持ちがした。
雪渓って不思議。夏なのに、どうして溶けないのだろう。少し、滑りながらサクサクと上を歩く感触がいい。博子さんが、記念に「雪渓の上を歩く私」の写真を撮って下さった。部屋に飾ろうかななどと考えながら歩く。
 景色と雰囲気を堪能しながら、進んで行くとやがて、朝日小屋が見えてきた。14:30到着。
赤いお屋根のかわいい山小屋である。北アルプスの本格的な山小屋にまた、感動する。雪倉岳・白馬岳方面も見えている。
小屋の中に入ると、受付があり何もかもが珍しく感じる。Tシャツやバンダナやバッジも売ってあり、テンションも上がる。夕食と朝食のメニューもボードに写真が載っており、期待度は増すばかり。食前酒だってあるらしい。さすが、気配りの女主人の山小屋である。お掃除も行き届いており、清潔だ。
私たちは、早くから予約しておいたお陰で広いお部屋を貸しきりで頂けた。荷物を降ろしてから、食堂で小さな小宴会をする。外は、すでにどんよりとしており、明日のお天気が気になるところだ。

 17:00から夕食。期待通りの素晴らしいご馳走であった。富山の名物が盛りだくさん。富山おでんに、カジキ(富山ではザスと言うらしい)の昆布〆、ホタルイカの沖漬けなど「ここは、本当に山の上なの?」と、びっくり。これを食べられるだけでも幸せである。
山小屋の女主人「ゆかりさん」の心からの歓迎のメッセージを聞きながら、朝日岳周辺で観られる高山植物のDVDが流れる所が、また良い。
富山を満喫したが、どうやら明日は雨らしいと聞き、心がざわめいていく。「どうか、どうか奇跡が起きて晴れますように。」と心の中で神様に祈りながら、眠りに就いた。
 

《3日目》 大塚 佐恵子

 昨夜から降りしきる雨足に一喜一憂しながら、清水ゆかり社長のひっきりなしになるキャンセルの電話応対が耳に残る中、三日目の朝を朝日小屋で迎えた。4時半起床、5時朝食。本日の天気は?他の宿泊グループの動向は?
 白馬岳を目指す者、雨の中下山する者、わが山岳会は視界1mの中、午前中は動かず様子を見ることにした。
 朝日小屋には蔵書が充実していて、清水哲郎氏の著書などここ北アルプスに関する書物は完璧。「岳」の漫画14巻読破した人、花図鑑を持ち出して、みんなで花談義。花博士がたくさんいるもの。
 食堂を借り、10時頃お弁当を半分頂き、また団欒。こういうのんびりした小屋生活も贅沢かも。
 雨の合間を縫って13時昼食後、朝日岳へトレッキング。準備体操をして13:30出発。
 一瞬霧が晴れ、雪倉岳が見えた。ちょっと期待しながら、雨に濡れた可憐な花たちを各々カメラに収める。
 登山道を進むと、白馬岳から朝日小屋を目指す50代の単独女性に会う。「もうすぐですよ」と声をかけると安心の笑みが浮かんだ。憔悴している様子だったが、それでも8時間で辿りつくとは素晴らしい!!
 次はやはり単独の男性。白馬の人で地理は熟知しているはずでも、雪渓で悩まされたようで、今年は残雪が多いと。
 昨夜の勉強会の成果、知らない花はない。尾根沿いの花を愛でながら進む。

朝日岳山頂
 14:10結構上り坂の長い雪渓に出た。新人さんは先輩の後について恐る恐る歩みを進める。(下りは石川さんのお手本で無事突破)
 どんなところでも花を見つけ写真を撮る。朝日岳の醍醐味。もうすぐ山頂と言うのに木道から出てお花撮影。
 14:40登頂。霧の中で記念撮影、帽子も飛ばされるほど風が強く、寒いのですぐに下山。
 15:40朝日小屋着。2時間10分のつかの間のお花見登山でした。それでも北アルプス最北端の朝日岳に足跡を残す。
 17:15夕食。こんなお天気では食事だけが楽しみ。朝日小屋のメニューは絶品。
毎日スタッフさん味の良く染みた手作りおでん。いろんな具材が7種類。うずら玉子にこんにゃくや、小さな油揚げやもちきんちゃくごぼう巻き。大根。里山で採り、皮を剥いて「瓶詰め」に加工した地元産「すすたけ」(根曲がり竹)。上に「富山の、白とろろ昆布」を乗せた『富山おでん』風。夕食は富山名産・昆布〆のお刺身や、富山湾の神秘・ホタルイカの沖漬けにも舌鼓。一杯200円の挽きたてのコーヒーも美味しいかったよ。
 さて、夕食後のミーティングでは明日の動向が決まる。最大の目的、白馬岳に行けるか。
 夕食前の“社長”さんのお話では明日も同じような天気だと。決行するかしないかは各グループにまかせるが、「安全第一、山は逃げないのでまた来てもらえるためにも無事に帰れること」を考えてほしいと。
 今日も鳴り響くキャンセルの電話に大わらわする“社長”さんの意見や白馬岳から10時間かかって下りてきた団体さんの感想を総合し、4日目は北又小屋に引き返し下山することとなった。
まだ明日の天気で変更も十分あるとのことだったが、1つの事件が下山を決定した。
60代の女性が午後6時ごろ朝日小屋に到着した。本人はこの天候の中、ペースダウンし予定より遅くなり、携帯も電池切れで連絡がとれなかったと反省されていたが、小屋では捜索に出る寸前だった。
熟練者だったからマイペースでパニックにならず無事これたのだろうが、甘い考えは許されないと思った。あと30分遅れていたら、日も暮れ、遭難にもなりかねない。
 雪渓で何度もアイゼンをつけたり、外したりする手間や小川の増水で渡渉が困難という情報も考慮し、落ちたら助からない尾根道の雪渓は雪道の経験がない新人さんには過酷で、10時間近く雨風に曝され体力も奪われる中、敢て白馬岳に向かうのは無謀ということで、翌日は朝6時出発で北又小屋に引き返し、温泉へGO。
富山で一泊、豪遊と決定した。神の宿る山々は簡単には登らせてくれない。だから次に登る時にはそれ以上の期待が膨れる。
 山への羨望は尽きない。

《4日目》 中村 沢子

 8月2日。早朝、いやまだ夜中じゃないかと思う時間に玄関口の音で何回か目がさめた。
そういえば朝3時出発予定のグループがいたような。白馬に向かうグループだったかな?私たちは今日は白馬は断念して北又小屋に引き返すんだったなー、と布団の中で思い出してまた眠りについた。
 5時、朝日小屋の朝食を食べながら、またこの小屋のごはんを食べに戻ってくるぞーと意気込む。
朝日岳には登ることができたし、100種類以上の花も見ることができた。そして小屋の食事は絶品!
 花の名前は石川さんたちに任せることにして、私の担当は小屋の図書コーナーにある漫画。停滞中は読みたかった漫画“岳”との記念すべき対面が叶ったし、白馬断念も後悔なし。白馬は次の機会にとっておいてもいいさー。
 そして小雨のなか6時すぎ出発。先に出発していた8人と3人のグループを追い越し、追い越されながら、雨の中をひたすら歩く。時々ひどく降ったけれど、幸いにも強風や雷はなかった。
登りと同じコースなのに、やっぱり下りの景色はちがうなーと感じながら、途中短い休憩を何度か取り12時前に北又小屋に無事到着。
 最後の吊り橋と、100段の登りの石段の後に再会した小屋のおじちゃんの笑顔にちょっと癒される。おじちゃんにもまたいつか再会することがあるかもねー。そのときはタバコはちょっと控えて下さいなー。
 タクシーで泊駅近くのお風呂に直行。3日ぶりの入浴は言葉もでないほどうれしい。なにせ登山靴の中もびしょびしょだったのだから。でも山から下りてきたとたんにお天気がいいのはなんだか納得がいかないなー。
 富山駅前ではビジネスホテルでそれぞれ個室をゲット。今まで大部屋だったのでなんだか急にさみしい気分。でも濡れた登山靴とザックの中身を所狭しと広げると、一人でもちょっと窮屈なくらいだ。
 夕食は以前富山に住んでいらした倉島さんのおかげで富山の名物をたらふく頂戴できた。
白エビ、ホタルいか、昆布、こしひかり、深海魚(名前、なんだったかなー)などなど。すべてがおいしい!大ヒットはやはり立山の吟醸酒かな。みなさん、おつかれさまでしたー、と乾杯!
 なにはともあれ、全員けがもなく無事に帰ってくることができて本当によかったです。
 初めての北アルプス、初めての山小屋、先輩たちの心遣いと富山の人たちのやさしさを感じて、やっぱり山をはじめてよかったなと思います。
 そして、北アルプスから戻った大塚さんファミリーには初孫ちゃんが!大塚さん、おめでとうございます!
 来年の夏にはまた北アルプスに再挑戦です。先輩方、これからもどうぞよろしくお願いします。

コバイケイソウ
コースタイム
7/31北又小屋〜2:40五合目〜2:05イブリ山〜2:50朝日小屋 (8.5H)
8/1朝日小屋〜朝日岳往復(2H)
8/2朝日小屋〜3:00五合目〜1:40北又小屋(4.5H)

参加者
CL田尻H、川口A、石川S、倉嶋C、大塚、松田、中村S
計7名、会員外1名