第1582例会 犬ヶ岳(キツネノカミソリと沢)

〜恐淵遡行組〜

三田 徹

▼7月28日(土)8:00に今村PAで北部組と南部組が集合、九州自動車道経由で、苅田北九州空港ICで高速を降り、途中、「トライアル豊前店」で食材、アルコールを調達し、道の駅「豊前おこしかけ」で昼食後、本日の山、求菩提山登山口に向かう。
求菩提山は英彦山とともに鎮西修験道の山として知られ、多くの坊跡や鬼の石段、岩壁に残る五窟、氷室跡、禊場跡など山伏の修行跡を垣間見ることができる山で、ゆっくりと2時間かけて散策した。
本日のテン場は、犬ケ岳登山口駐車場で水の確保を心配していたが、途中にはおいしい水場もあり心配無用であった。
 夕餉の準備をするうちに、下関山岳会の市橋さん、原田さんも到着し、長崎山岳会の皿うどん、下関山岳会のゴーヤチャンプルをメインに、おいしい食材、アルコールで腹を満たし、22:00には就寝。
▼7月29日(日) 5時起床、縦走組と沢登組の2隊に別れ7時出発。恐淵沢には30分ほど歩いて入渓する。10分ほど歩くと、見事なキツネノカミソリの群落が迎えてくれてしばし写真タイム。
 遡行終了までザイルは2回出したが、メインは最後の20mの大滝。水流の左にハーケンが打ってあり、ランニングをとって登る。恐淵はゴルジュあり、階段状の滝など様々滝があり、どれも高巻することなく楽しんで登れる沢であり、下界の暑さを忘れさせてくれた。遡行終了の時間がまだ早かったので、折角なので犬ケ岳に登ると、山頂で縦走組と合流し、その後は行動を共にしてウグイス谷から下山、卜仙の郷の温泉で汗を流し、長崎への帰路に着く。高速道路のおかげで思ったより近い犬ケ岳であった。
参加者: <沢登組>CL下松八重、三田(徹)、窪田、大塚、会員外1名、計5名


〜縦 走 組 〜

西川 陽

下関山岳会員1名を含む5名の縦走組は、途中まで沢組と行動を共にすることとし、当初予定の「ウグイス谷」コースを橋の右側から沢沿いを登る「恐淵(おそろしぶち)」コースに変更、沢組5名と一緒に7:00幕営地(標高約450m)を出発。
7:35約1.2km歩いた杉林の中で右下の沢に降り遡行を行う沢組と別れる。
ここからは我々縦走組の行動となるが、数分後標高約650mの地点で左側斜面に満開状態のキツネノカミソリの群落に出会う。薄暗い斜面は広いスペース花一杯であったが、ここの花は多良山系のものと比べて色が薄く白っぽかったような気がした。
 この付近から右下の恐淵の滝や爆流・岩壁を見ながら暗い山道を直登する。「大竿峠まで0.95km」の標識があり、あと少しと気合を入れて歩くがこれがやたら長く標高約1060mの大竿峠には9:25到着。
ここで休憩、せっかくの機会だからと目指す犬ガ岳(東方向)とは反対方向の「一の岳(1124m)」を約50分かけて往復し再び大竿峠に戻る。ここからミズナラ・ブナ林の中を歩き犬ガ岳山頂(甕(かめ)の尾・標高1131m)には10:55到着。
山頂にはコンクリートの避難小屋を兼ねた展望台があるが周囲の木に遮られ展望はよくない。ここで記念撮影後、昼食をとる。
 昼食後、下の方から「ヤッホー」の声が聞こえ沢遡行を終えた沢組5名が犬ガ岳山頂に登ってきた。11:30に2チーム合流、それにしても「すごいスピード・パワーだな」と沢組の健脚ぶりに舌を巻く。
ここから10名の統一行動となり、急坂を下り、シャクナゲの自生地として国の天然記念物に指定されているツクシシャクナゲのトンネルの中を進み、犬ガ岳縦走のハイライトといわれる笈吊岩(おいづるいわ)へ。
笈吊岩は、修験者も背負っていた笈を肩から外して吊るして登り降りしたという難所の岩場で、メンバーは鎖を使い慎重に下降。岩を下ると笈吊峠でここを経由し、林道出合いで休憩後ウグイス谷への急坂を下る。ウグイス谷では再びキツネノカミソリの群落に出会い、目を楽しませてもらい14:15登山口へ帰着した。
 所要時間は計画6時間に対し7時間強。英彦山の東北に位置する犬ガ岳の今回のコースは沢沿いで薄暗い箇所が多かったが、ブナ・ミズナラの緑、シャクナゲ・キツネノカミソリの群落等特長・変化があり、英彦山・求菩堤山と並ぶ豊前の修験道に関係する面白い山の一つだと感じた。
 個人的には山頂から下りで脚が引きつり十分な歩行が出来ず、メンバーに迷惑をおかけした。不摂生・年齢?による体力低下を露呈、期待の笈吊岩にも挑戦できず、迂回路を下るという悔しい思いをしたので今後普通に歩けるよう体力維持に努めたいと思っている。
参加者:< 縦走組> CL西川(陽)、石川(純)、西川(幾)、松田、会員外1名、計5名


松田 朋子

 はじめまして。この度、長崎山岳会に入会させて頂きました松田朋子です。
今まで、アウトドアとは無縁の人生を送ってきましたが、自宅の近所の山「岩屋山」に登り、緑の美しさと野草花のかわいらしさに心奪われ、山のとりこになってしまいました。以前、新聞の切り抜きで取っておいた、長崎山岳会の記事を思い出し、会長の田尻さんにお電話し「山登りは初心者ですが、仲間に入れて下さい。」と無謀にもお願いしました。
 さて、その初心者の私が、今回7月28日〜29日の犬ヶ岳キツネノカミソリ鑑賞登山にトライして参りました。
▼何をどう用意したらいいかわからず、登山道具を一から揃えるのに西川葉子さんにお世話になりました。何とか整いました。
▼ワクワク、ドキドキしながら荷造りをし、準備万端、当日を待ちました。
▼7月28日(土)出発の日、朝6時半、しっかり朝食を食べてリーダーの下松八重さんのお宅に向かう。下さんの車で、石川さん、西川さんご夫妻をピックアップして、8時に集合場所今村へ。三田さん、窪田さん、大塚さんと合流した。
皆さんには、当日が初対面だったので受け入れてもらえるかと、とても心配だった。皆さんの笑顔にホッとしながらも、まだ緊張はとけない。
高速道路→苅田IC→10号線、途中スーパー「トライアル」で、食材やビールなど買い込む。お酒を全く飲まない私は、ビールを買い込むなどという行為も新鮮!そして、道の駅「おこしかけ」(その昔、天皇がお座りになった丘陵なので、「おこしかけ」と地名がついたそうだ。)で昼食タイム。
豊前の地元の野菜もたくさん売ってあって、楽しい。メンバーの人が、トマトや桃なども買っている。(後で、山頂でその桃を頂いたら、生き返るようにおいしかった。)
 昼食が済むと、1日目は軽く求菩提山(くぼてさん)に登るという。求菩提山も犬ヶ岳も英彦山の仲間らしい。1日目で、そんなことをしたら2日目が疲れないのかなーと不安に思いながらも、とにかくついて行ってみる。
求菩提山は、山伏の修行や生活をかいま見る事のできる、歴史を感じられる山であった。石を彫って作った、みそぎの為の獅子の口や、鬼の磴という850段の石段を登ったり、国玉神社でお参りしたり、霊験あらたかである。山伏に階級制度があることも知った。
下臈(げろう)→中臈(ちゅうろう)→高臈(こうろう)→極臈(ごくろう)→座主(ざす)。きっと「ごくろうさん」の「ごくろう」はここからきたんだという、三田さんの冗談に一同で大笑い。身体だけでなく、頭の方も活性化したぞと満足して、求菩提山を下りる。
 いよいよ、1日目の夕方。犬ヶ岳登山口駐車場。野外での食事とテント泊。テントに泊るなんて、小学校の子ども会のキャンプ以来だ。下関山岳会の原田さんと市橋さんもここで、合流する。さて、食事の準備のお手伝い。
石川さんと西川さんのテキパキした動きで、皿うどんと酢の物ができあがる。皆が持っている、金属の食器がカッコいい。(少し、古びた感じがいいな。)金属の中でも、チタンは最も軽くて、山向きであること、最小限の水で食器を洗う方法など、ひとつひとつが感心したりびっくりしたりすることばかり。
少し、暗くなってきてランプの下で、お酒を皆で酌み交わしながら、山談義に花が咲いている。お酒を飲めない私であるが、雰囲気だけでも充分楽しい。ジュースでも、酔える。原田さんと市橋さんとの楽しいかけ合いが、夫婦漫才みたいだ。
そのうち、原田さんが、おもむろに豆腐を取り出す。もしや、ゴーヤチャンプルを作り出すのかと、皆の視線は原田さんの手元に。豆腐を器用に切り分け、フライパンでじっくり焼き付ける(これが、ミソ!)。お肉、ゴーヤ、卵など投入。ゴーヤチャンプルがあっと言う間に出来上がる。
これまた、原田さんの釣ったイッサキの一夜干しと炊きたてのごはんが、なんて美味しい。自然に囲まれて美味しい物を食べて幸せだなー。原田さんって、何でも器用にこなして、素敵だなー、魔法使いみたいとすっかり感動してしまった。
 夜も更けてきて、テントの中で寝ることになる。大人になってからの初めてのテント。眠れるのか、心配だったけれどこれが割りと平気だった。近くの川の音も良いBGMになった。おお、これぞ自然!私も、ワイルドになれたぞと自分に満足。
▼7月29日(日)早朝5時。皆の気配で起床。少し、テントの中でボーっとしていたら、いつの間にかもう石川さん、西川さんが朝食のみそ汁とソテーを作って下さっている。あー出遅れたと、恐縮しながらも、しっかり朝ごはんを頂いて、本日の英気を養う。準備をして、いよいよ7時、犬ヶ岳に出発である。
 沢組は、下さん・三田さん・窪田さん・大塚さん・市橋さんで、縦走組は、石川さん・西川さんご夫妻・原田さん・私である。
沢組のヘルメットや沢靴などの装備も目新しい。途中まで、皆で歩き、沢組と縦走組に分かれた。
しばらくすると、「キツネノカミソリ」がお目見えしてきた。群生している。素晴らしい。さっそく、カメラに収める。
ゆっくり、花をながめたり休憩したりしたので、脚のほうはまだ、大丈夫。脚の疲れより、困ったのはアブやブヨ、蚊などの虫の多いこと。やはり、山の虫はたくましいし、すばやい。虫除けスプレーで防御する。
でも、すっかりワイルドな気分になっている私は、「そりゃ、虫もいるでしょうよ。山だもん。」とプラス思考に。(家に帰ってから、顔を3ヶ所さされて腫れていることに気づいた。その傷は、いまだにとれていませんが、勲章だと思うことにしています。)
大竿峠や一ノ岳などを経て、犬ヶ岳の山頂を目指す。ずんずん歩き、ついに犬ヶ岳山頂へ。そこで、休憩と昼食。山では、食べるものを行動食と呼ぶことも今回初めて知った。
そうこうしているうちに、沢組が、沢を出てから追いついてきた。「ヤッホー!」と言いながら、姿を現す沢組。すごい。恐るべし、沢組の体力!山でのかけ声は、やっぱりヤッホーって言うんだと妙なところで、感心したりする。この後、難関が待ち受けていることも知らずに・・・
 その難関とは、30メートルあまりの岩場を降りなくてはいけなかったのである。迂回路もあったのに、挑戦してみようと軽い気持ちでついて行ったものの、「こんなに高いなんて、ウソでしょー。」と、断崖絶壁に体中震えた。もう引き返せないところまで来ていた。鎖にしがみついて、どうしていいかわからず全く動けない。
下から、下さんが「後ろ向きで降りろー。手だけでぶら下がるな。必ず、足場を確保して3点で支えろー。」と指示。「はい、わかりました。」と納得。
石川さんは、いつの間にか私の側に来てくれて、「次は、ここに足をかけて。次はここ。」と教えて下さる。「必ず、生きて帰る!」と腹を決め、コツがわかってきて、何とか正気を取り戻し、皆さんのおかげで、やっとこさで下に降りることができた。
 登山口の駐車場に到着した時は、嬉しかった。そこで、また原田さんの魔法で、冷えた甘いスイカが登場した。身体中が疲れていたので、美味しかった。
 求菩提温泉卜仙の郷温泉で、さっぱりと汗を流し帰宅の途へ。無事に、今回の登山を終える事ができました。(後日談ですが、2〜3日後筋肉痛で、ロボットみたいな歩き方になっていたのでした。)
 先がけて、お世話下さった田尻会長さんご夫妻、いろいろ気配りし教えて下さった下さん、三田さん、窪田さん、車の運転や会計などもお世話になりました。
石川さん、西川さんご夫妻にも随分助けて頂きました。大塚さんも親切にして下さいました。原田さん、市橋さんにもお世話になりました。
皆さんのお蔭様で、こんなに有意義な例会初登山を終える事ができました。ありがとうございます。これからも、いろんな山にチャレンジしていきたいです。長崎山岳会の皆様、これからもよろしくお願い致します。