第1558例会 根子岳縦走

三田 徹

当初、比叡山を予定していたが、日程の都合で根子岳に変更することとなり、根子岳であれば新人3人を何とか引っ張って行けると思い、権現岩、牛の首での岩登りの研修を重ねて本番に臨んだ。
▼10月7日(金)20時過ぎに長崎を出発し、23時15分に一の宮総合運動公園に到着、軽く飲んで明日に備える。
▼10月8日(土)6時に起床、テン場を6時55分に出発し、ヤカタガウドの登山口に7時6分着、準備を整え7時18分に登り始める。以前、見晴新道から取りついたことはあるが、ヤカタガウドからは初めてである。まだ、朝早くて暗いせいか、何とも陰鬱な谷といった感じである。
トップの川添君が早く歩いたので、天狗のコルには8時40分に着いた。
ここでハーネス、ヘルメットを装着し、登攀開始。最初のトラバースを越え、天狗山頂には9時55分着、素晴らしい天気の中、皆それぞれ記念撮影する。
続いて、25mの懸垂下降だが、終了点に若干ザイルが足りず、下さんセットの補助ロープで何とかやり過ごす。懸垂自体は研修の成果もあり、新人3人とも無事降りることができたが、補助ロープに移る際若干手間取っていたようだ。これも経験。
ここからはナイフリッジや補助ザイルを使う登下降がいくつか出てくるが、特にプルージックあるいはオートブロックといったロープワークが咄嗟にできない場面があり、日頃からのロープワークがいかに大切かを新人には学んでほしいと思う。
今回はピーカンの天気だったからいいけど、風に吹かれたり悪天の場合は、一つひとつの動作の遅れがロスとなり、ひいては事故の可能性が高くなる。
 根子岳の印象としては、やはり年々崩壊が進んでいるようで、特に六峰から西峰に至るトラバース地点は、以前はザイル無しで通過したが、今回はザイルを出した。以前経験したところでも、より慎重な対応が求められる山ではないかと思った。
 西峰には13時20分着。下さんからここは西峰ではなく、ここから南に見えるのが西峰と言われたが、帰ってからインターネットで調べてみたら、下さんが言うのは西峰本峰(別名「嫁ノ平」)で、我々がいつも頂上を踏んでいるところはやはり西峰とのことだった。
 少々不明瞭な尾根筋の登山道を下山し、ヤカタガウドには15時着、「えびすぱーな阿蘇店」で食材を仕入れ、今夜のテン場である仙酔峡の避難壕に移動し、無事の縦走を祝し乾杯する。
▼10月9日(日)本日も晴天、8時に駐車場を出発し、私としては初めての高岳を馬鹿尾根から登り、せっかくなので「天狗の舞台」経由で昨日登った根子岳を眺め、中岳を経て12時10分に下山、近くの温泉「アゼリア21」で汗を流し、帰路に付く。
2日間天気にも恵まれ、充実した山行であった。


初めてづくしのネコちゃん

大塚 佐恵子

天気にも恵まれ、仲間にも恵まれ、根子岳登攀を目指す。
 阿蘇五岳の初めての挑戦が、クライミング技術がないと決して登れない、しかも崩落が激しいギザギザ部分の頂上、根子岳天狗峰とは、この上ない恵まれ。神様に愛されすぎ?
 ヤカタガウド入口から入り、舗装道路を秋の花達に歓迎されながら進むと、砂防ダムにつきあたる。
 堰堤にせき止められたガレの連続を過ぎ、険しい沢に入る。トップの川添さんの後を息を切らし、無心に登り続ける。前方に奇岩が見えた。天狗の鼻?まさかぁ。めがね岩だった。先は長い。やっと天狗のコルに到着。
 キケンと塗られた岩壁トラバースに挑戦だ。水平に6m移動してから6m岩壁を攀じる。下は100mの断崖絶壁。今までの研修の成果でクリアー。簡単そうだったが意外と足がすくむものだ。強がり?
天狗岩到達。岩の向こう側は真っ青な空だけで他に何も見えない、こんな景色初めて。感動のシャッター。
 ピークから少し下ると25mの懸垂下降。『一目惚れ』の懸垂下降は初めての体験から楽しいばかり。
 10mのナイフリッジ、続いて4mのクライムダウン。しばらく進むと、尾根が50pくらい切れている個所がある。キレットとっ。これが<蟻の戸渡り>。勇気を出して、なんなく飛び越える。続いてローソク岩のある、5mの岩壁を登攀成功。イェーイと写真撮影。
 後方に聳え立つ天狗峰を眺め、山登り5カ月の若輩が山岳会の先輩に支えられ、できた偉業に感激する。
 再び高さ10mを垂直下降。3mグズ岩の小さいナイフリッジ、慎重に跨ぐ。登山道を西峰へ進むが崩壊がすすみ、断念。三田さんがずっとここが西峰だと思っていた頂上へ到達することで満足し感動にひたりながら下山。
 本当にバリエーションコースでハラハラドキドキの本番。練習通りに行かない場面も多々。クライムダウン時ロープが足りず、下さん補助ロープをクリップして、別の個所に支点をとる。
ダウンした場所で一旦エイトカンを外して補助ロープの方へ移る。注意を受けながらもぎりぎりまでダウンしたためエイトカンが外れない 。下さんが登って来て外してくれる。

 崩落が激しい崖、三田さんトップでトラバースのザイルを張る。ビレイヤーがセルフビレイしてザイルを木に結ぶ所、 ロープワークがスムーズに行かず下さんに代わる。
 今回の例会でリーダー達から学んだこと。咄嗟の判断、行動が取れないという反省点を踏まえ、例会に「連れていって貰う」のでなく「自分の責任で行く」という意識改革とクライマー、ビレイヤ―が「あうん」の呼吸で一秒でも無駄のない動きがとれるよう実践を積んでいくしかないと。
 “たくさんの初めての”経験と感動を糧に、さらなる山を極みたいと身の上知らぬ野望をいだくのでした。


川添 正寿

天狗のコルに立ち、ハーネスを着用した。さあて、いよいよロッククライミングのスタートだ。第一関門は、100m以上も切立っている岩場のトラバース。
三田さんリードの後の二番手。ホールドの状態の難度は、これまでの練習してきた権現岩、牛ノ首とはあんまり変わらない。しかし、実践は違う。足元の下には超ド級の垂直壁。
絶句し、・・・は縮み上がった。いきなり、恐怖感が襲ってきた。死を感じる感覚がなんとも言えなく、心の奥にリアル感で迫ってきた。「妻子もいるのにこんな遊びやって本当にいいのだろうか?死のリスクとおもしろさと、本当に天秤かけてやっているのか?これ以上深みにはまると、この遊びから抜けれなくなるゾ!」など、先週の牛ノ首の時も同じことを考えたのだが、今回はより強く感じた。「今なら後戻りできるけど、どうする?」と自問があった。
続く関門は30m超える懸垂下降であった。50mロープのダブルで足りず、補助ロープへと移り変わる時、セルフビレイにもたつき、下さんから、怒られた。その他、3mから5m位の登攀・下降が続き、結構、難しさやスリルがあり楽しめた。
私は、3年前に天狗のコルから根子岳東峰にアプローチしたことがある。その時、西峰の方向を見て、いつかは天狗岩にチャレンジしたいと思っていたが、実現する感覚は皆無だった。
やはり、そこには、きちんとした指導者から教えてもらわないとできないと諦めていた。そうしたなかで、今回のチャンスを頂いた山岳会に感謝したい。
 二日目早朝、高岳登山口から鷲ケ峰を望んだ。朝日に照らされた北方稜線は美しく猛々しい。「ここへ登ってこい」と誘っていた。この瞬間、気持ちはふっきれた。
「是非挑みたい。こわそうだけどおもしろそう。恐怖感もあるけど達成感はひとしおだろう。仲間との一体感もある。ロープワークやギアの扱いも飽きない。ギアには金を投資し、徐々にではあるが揃ってきている。後には引けない。よし、とことんやるゾ」これが、昨日からの自問自答した答えと言えよう。
丘にある数多くの墜落者の墓場を見たけど決心は揺らがなかった。今後も、諸先輩方々、見捨てないで、ご指導をよろしくお願いします。
 2日間一緒にいればいろいろハプニングもある。紙面の関係上、割愛しておく。皆さんゴメンナサイ。本当に、下さん、三田さん、ご指導ありがとうございました。
大塚さん、葉子ちゃん、楽しい2日間だったね。また、一緒にやろう。また、他の先輩方々にも、大いに感謝申し上げたい。すべて、これまで、何も知らない私に温かくご教示頂いたおかげである。
最後に、落とし物は、みんなの迷惑です。落とし物がないよう気をつけましょう。


西川 葉子

今年4月に入会して先輩方々に研修会で岩登りを教えて頂き、今回根子岳縦走例会に参加しました。
 8日根子岳縦走。天狗のコルからトラバース、その後痩せ尾根歩き、ザイルを使って岩登り、懸垂下降、バリエーションルートを体験しながら行きました。天狗の峰山頂に着いた時「ヤッター」と両腕を上げて喜んだ事が印象に残っています。
 行く先々で見る可愛らしい花が心を和ませてくれました。足場を取られながらも無事に下山。楽しかった思いと達成感で胸がいっぱいになりました。
 9日阿蘇高岳、中岳縦走。昨日の疲れで足が重くゆっくりと登って行きました。天狗の舞台から根子岳がきれいに見えて昨日の自分に“頑張ったニャン”と感激しました。天気が良くて、高岳、中岳山頂から見る景色が最高でまた来ようと思い下山しました。
 2日間の山登りで感じた事は、楽しかった半面、更に岩登りの技術を身に付けたいと思う課題が出来た事です。
 今回の例会でお世話になった三田先生、下松八重先生、川添さん、大塚さん、ご一緒出来て楽しかったです。ありがとうございました。感謝。

参加者:会員5名