第1434例会 北アルプス白馬〜朝日岳縦走
プロローグ
田尻 博子
我が山岳会の精鋭たちは毎年アルプスの春・夏・冬山に張り切って出かけているが、私は久しく中央の山に行っていない。歳は取る一方なのでここら辺りで一回行かなくてはと、北アルプスに目が向いた。
山域は10年以上前、石川さんと計画して実行しなかった白馬岳以北の花を巡る山行にすぐ決まる。
調べ始めると一日の行程が長いのが気にかかる。しかしこれ以上若くはならない。頑張ってトレーニングをしよう。後は行けば何とかなるだろう精神で例会に組む。
ところが、トレーニングに山に行くと膝が痛くなり自分の体調に不安な日々。お天気が悪くなったり、体調が悪い人が出たらその判断は?とまた不安。ゆっくり歩く、悪天候の時は小屋で停滞しようという山の基本を石川さんと確認する。
当初、北海道の一瀬さん、米子の吹野さんの参加で7名の予定だったが、それぞれの都合でキャンセルになり、5名の参加になった。
一瀬さんは北海道の仲間と同じコースを計画し、我々が蓮華温泉に到着した日、悪天候の為白馬岳から下山して来て、会うことが出来た。
久しぶりに北アルプスに行って、お天気に恵まれ花も景色も最高だったが、それだけでなく、持って行く荷物や、小屋の状況、行動食の取り方など、実際行ってみて勉強になった事が多かった。
工夫次第でまだしばらくは中央の山に行けそうだと、ますます元気を貰って帰って来た。
参加者:会員5名
8/5 登山第1日目 蓮華温泉〜白馬山荘
西川 幾恵
私には縁のないと思っていた北アルプスに行ってきました。
写真でしか見ることが出来なかったたくさんの花、剣岳や立山連峰なども手の届きそうな距離で眺めてきました。
長崎を出て2日目、前日からの雨はやみ、少し霧は有るが雨は降ってない。天気予報は晴れ。
準備を済ませ朝食のおにぎりをほおばる。ザックを担いで出発しかけたが、初日だし準備体操をした方が良かろうとザックを下ろし体を伸ばす。
再び蓮華温泉を出発したのは6時。まず目にしたのが山紫陽花の青紫と山独活の白い花。木立の中の道なのに、蒸し暑く汗が滝のように流れる。
標高差1500mの登り道のとりかかり。1回目の休憩でTシャツを脱ぎブラウス1枚になった。前日の雨で白馬山荘から蓮華温泉ロッジに戻って来ていた北海道会員の一瀬さんの“虫情報”で半袖にはなれない。
2回目の休憩も30分後。蒸し暑さと隠し玉と不要の荷物が入ったザックが重い。この日に備えた事前トレーニングのため足は動くが腰が痛い。
休憩後は元気いいが「牛のよだれ」の呪文が何時しか「牛の頭」になっていた。アレッ!指先も少し痺れている。これはまずいと「水分補給したい」と手をあげ、水と一緒に昨夜一瀬さんに貰ったアミノサプリを飲んだ。
天狗の庭に着いて風が渡るようになって調子が出た。岩桔梗、山ルリ草、山ははこ等が咲いている。
白馬大池はチングルマ、コバイケイソウ、アヤメを始めたくさんの花が迎えてくれた。人もぐっと増えた。
女子トイレが長蛇の列で、途中で済ませた私には絶好の休憩タイムになり、行動食を充分食べた。私の荷物を自分のザックに引き受けてくれた夫のお陰もあって以後は少し遅れながらも快調に歩いた。
雷鳥坂のはずれで二羽の雷鳥に会う。三国境の先でも岩の上にいる雷鳥から警戒する鋭い鳴き声も聞いた。
小蓮華山はかなり険しい山容で崩壊のため登山禁止。ロープの囲いがありました。
三国境はコマクサの小さいブッシュがたくさんあり、これも登山者が踏まない様ロープで柵を作ってあった。明日はここから雪倉岳に登ります。
白馬岳は360度の展望らしいが深い霧と強風で足を止めず先を急ぎ14時30分、本日の宿泊地白馬山荘に到着しました。所要時間8時間30分。私が足をひっぱったのにほぼ予定通りの行程でした。
リーダーが受付けをしている間、私はクールダウンで筋肉の緊張をとりました。更に夕食前は幾恵ちゃんのストレッチ教室で今日の疲れを取り明日に備えた。
夕食後は厚い霧が嘘のようにきれいに晴れて防寒着を着て素晴らしい夕焼けと剣、毛勝三山等周囲の山々を眺めました。
一時はどこから引き返すのがベストか考えながら歩いたのに白馬山荘まで歩けた事に感謝です。また、翌日からの自信にも成りました。
今回もリーダーの終始一貫同じリズムの歩調に助けられ完歩出来ました。ありがとうございました。
余談ですが、先の一瀬さんが中高年の3種の神器は「スパッツ」「ストック」「アミノサプリ」だと教えてくれました。2日目からストックを使い、3日目は朝からアミノサプリを飲んで快調に歩けました。
白馬大池にて |
もうすぐ白馬岳
(三国境過ぎ) |
白馬山荘から
夕暮れの剣岳 |
ウスユキ草 |
白山コザクラ |
コースタイム
8/5(日)、蓮華温泉ロッジ6:00⇒天狗の庭(2093m)8:26⇒9:43白馬大池(2469m)
10:13⇒雷鳥坂⇒12:29小蓮華山(2769m)
12:48⇒三国境(2751m)13:30⇒白馬山頂(2932m)14:15⇒14:30白馬山荘
第2日目 白馬山荘〜雪倉岳〜朝日小屋
石川 純子
8月6日(月) 8/6(月) 晴れ時々曇り
4:30起床、小屋のお弁当や行動食でそれぞれ朝食をとり、人のごったがえす頂上へ向かう。上空には物資を運ぶヘリがもうやってきてさすがマンモス山荘だ。
風もなく晴れているが、信州側は期待の南アも富士も雲の中、稜線を境に西側は素晴しい展望で、これから向かう雪倉・朝日、黒部の深い谷をへだてて登ってもいないのに何だか身内のような毛勝三山、剣、立山、ふりかえると杓子から鹿島槍のかなたの昨日淡い夕闇のなかに見たとんがりはやはり槍ヶ岳。
懐かしの鹿島槍や剣をバックに写真を撮り、いよいよ白馬から北へ辿りたいという何十年来の夢に向かって昨日登った稜線を下る。
信州側の急な斜面にウルップソウ、ミヤマクワガタ、タカネシオガマなどが咲き乱れ、やがてコマクサがそこここに見られると三国境だ。ここから長野にさよならをして新潟、富山二国の県境稜線に沿って歩くことになる。
白馬山荘 |
雪倉岳に向かう |
三国境 |
白いガレ場を行く |
ひと息いれ、目の前の鉢ヶ岳に向かって花の多い岩屑の斜面を下っていく。小さな二重山稜に5人の細長い影が印象的だ。
イワギキョウ、タカネツメクサ、イワツメクサ、まだ蕾の堅いタカネマツムシソウ、イワオウギ、イブキジャコウソウ、オンタデ、クモマミミナグサなどなど、花の終ったチョウノスケソウのかわいい葉っぱも見かけた。
小さなこぶで小休、振り返ると白馬旭岳が厳しい山容でそびえ清水岳へと続く。この辺りで右から雪倉山麓コースが合流するはずだが、花に気をとられ見落とす。左下には長池が緑の中にひっそり。
ここから少し下ると鉢ヶ岳のコル、お花畑と雪田の東側斜面を巻いて行く。ハクサンイチゲ、チングルマ、アオノツガザクラ、ハクサンコザクラ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、イワイチョウ、イワカガミ、ツガザクラ、ウサギギク、ユキクラトウウチソウ、オヤマソバなどの花、花、花。
雪田から流れる水は冷たく、快晴の青空、心地よい風、ただただしあわせ〜というほかない。
少し登って稜線にもどり、クルマユリ、ヒメシャジン、イワシモツケなどの咲く道を下ると雪倉避難小屋。緊急時には利用できるしっかりしたつくりで中にトイレもある。
一面コバイケイソウの咲く斜面を眺めながら軽いお昼を食べ、どっしりとかまえる雪倉岳に取り付く。
タカネバラ、タカネナデシコ、タカネスミレ、シロウマアサツキなどが咲く草付の稜線を一歩一歩登る。30分歩いて5分休みのピッチを刻みながら、岩屑のゆるい斜面を登りつめるとそこが雪倉岳(2,611m)だった。
しばらく前からガスがわき、頭上も周囲の山もガスがかかっている。なだらかな頂上には「雪倉岳」と刻まれた立派な標石が置かれていて記念撮影。白馬から北は人も少なく・・・というのは昔の話らしく、中高年ツアーの団体やら学校行事らしい高校生、若者もちらほらと行き交う登山者は結構多い。
陽さんの隠し玉グレープフルーツをいただいて、岩屑の広い斜面を下っていく。
ここも花がいっぱいで、ミヤマアケボノソウの黒っぽい花やしっかり開いたマツムシソウもたくさん見た。
このころまたガスがきれ行手に赤男山が横たわり、朝日岳がその奥に大きくひかえるのが見える。白馬水平道はまだまだ先のようだ。
岩礫の道の側で2回目のお昼を食べる。途中大きなザックの単独行らしい若い女性が登ってくる。
雪倉の下りは思っていたよりずっと長く(標高差約500m)ここを荷物を背負って登るなど(その前に朝日を越えてきたと考えると)とんでもない。いやしかし、我が山岳会にもたしか6年前海抜0mの親不知から登ってきた若かりし2人のお兄さんがおりました。
ムシトリスミレの咲く斜面を下り、ツアーの団体がお昼を食べている雪倉池への分岐点から道は左手岩峰下のカールに入り、ハクサンフウロなど花の多い斜面をジグザグに下るとまもなく赤男山とのコルに出る。
道はここから樹林帯に入り南西側の山腹を登り気味に巻いていく。林がきれて木道が現れ、おいしい沢水にのどを潤し、タオルを浸して顔や首を冷やす。なんとも気持よく最高の贅沢、これも登山の醍醐味だ。
ここからしばらく小桜ヶ原とよばれる高層湿原のお花畑が続き水も豊富で、ハクサンコザクラ、イワイチョウ、リュウキンカ、花が終っておばけのように大きな葉っぱのミズバショウなど楽しみながら木道を歩く。
木道が終り少し行くと、やっと水平道分岐に到着。残雪が遅くまであるのだろう、キヌガサソウやサンカヨウ、エンレイソウが咲いている。
ここでお弁当を食べていた女性は雪倉でシャッターを押してもらった人で福岡からという。これから朝日に登り、明日はイブリ尾根を北又に下るとのこと、お互いがんばろうと我々は水平道へと歩き出す。
朝日岳南面の山ひだを忠実に登ったり下ったり決して水平ではなく、そろそろ疲れのでてきた身にニッコウキスゲ、ミヤマツボスミレ、ハクサンコザクラなどが力をくれる。うす陽がさし風がなく暑い。
もうそろそろと思いながら水量たっぷりの沢(水谷源頭)でひと息いれていると、霧の間に間に赤い屋根の朝日小屋がすぐそこに見え元気百倍、15分で朝日平の小屋に到着。小屋の前のキャンプ場にはテントが5張程。
今日は客が多いとのことで、8畳の部屋に明日蓮華に下る2人連れと栂海新道を歩くという単独の中年女性、我々5人の8人が同室。ザックを下し、なにはともあれビールで乾杯。今日もよく歩けた(8時間40分)こと、たくさんの花に出会えたことに感謝。
4時半より夕食。うわさに違わず食前酒つき、富山湾の魚の昆布〆や肉じゃが、長芋、天ぷらなどの豪華版。食事の前に小屋の有名おばさん、清水ゆかりさんの挨拶があり、食事中は朝日岳の花のビデオが流れるサービスぶり。
食後は同室者とのおしゃべりで時を過ごす。夕方から雨になったが予報は明日も晴れ。7時半には1人1畳、ゆったりと横になる。
朝日小屋 |
朝日小屋夕食 |
コースタイム
白馬山荘5:30−5:50白馬山頂(2,932m)6:00−三国境6:30−8:15雪倉避難小屋8:40−9:25雪倉岳(2,611m)9:35―赤男山コル11:10−12:05白馬水平道分岐12:15−13:40水谷源頭13:55−14:10朝日小屋(2,150m)
追記
今回、長年思い続けていた山々、それもまさに百花繚乱咲き乱れる屈指の高山植物の宝庫を歩くことができ感慨ひとしおです。日々環境問題が深刻化している現在、ただそこにあるだけの自然がどうかいつまでも変ることのないようにと願うばかりです。
第3日目 朝日小屋〜蓮華温泉ロッジ
田尻 博子
8月7日(火) 昨夜半降っていた雨も上がり朝から良いお天気。サポートタイツのおかげか膝の痛みもない。今日も頑張ろう。5:40朝日小屋のご主人清水ゆかりさんに見送られて出発。しばらく木道を行き、朝日岳の登りにかかる。とにかく今日の行程は長い。最初の登りはゆっくり、ゆっくり。
朝日岳へ向かう
朝日岳山頂
6:45山頂着。剣岳が昨日より大きく見える。昨日から同じ行程を歩いている人達もそれぞれに登ってきて記念撮影をし出発して行く。我々も記念撮影の後、白馬岳、杓子岳を見ながら気持ち良く下って行く。小屋のゆかりさんが蓮華温泉までも花が多いと言っていたがその通り。ハクサンコザクラの群落、今日も沢山の花に出会う。
7:15吹上のコルで一休み。日本海に出る栂海新道との別れ。こちらに降りると途中もう一泊必要になる。昨夜同室だった単独行の女性(たぶん50代後半)はこのコースを歩くと言っていた。そのうち朝日岳は見えているが、雪倉岳・白馬岳はガスがかかって見えなくなった。木道が多くなり、歩きやすいような、悪いような。濡れていると訳がわからないままスッテーンと転んでしまう。
9:20五輪高原まで来るとニッコウキスゲの群落やコバイケイソウ、キンコウカが多くなる。樹林帯と違い風が通り気持ちが良い。又樹林帯に入りアップダウン。疲れと高度も下がり蒸し暑い。水場があるとついつい休憩になってしまう。
沢の音が聞こえてきて、10:45大きく開けた白高地沢に着く。陽射しが強く、河原の石が白く反射してなお暑く感じる。此処で大休止。
11:20何度も流されて架け替えられた鉄パイプのような橋を渡り、しばらく川沿いを歩いて、又樹林に入る。瀬戸川に架かるリッパな鉄橋を渡るといよいよ「最後の登りが大変ですよ」と聞いていた急登か?
13:00腹ごしらえをして、ゆるゆると歩く。覚悟が出来ていたので思っていたより楽に13:45兵馬の平に到着。広々とした湿地帯、冷たい水、オニシオガマ、ハクサントリカブトが咲いている。此処まで来れば一安心。他の登山者も思いは同じ。「後はビールと温泉ですね!」と声がかかる。此処からは緩やかな登り、ほとんどが木道になっている。青いヤマアジサイの花に慰められながら歩を進める。やっと蓮華温泉ロッジの赤い屋根が見えて右手はキャンプ場。
蓮華温泉ロッジ
15:05ロッジに到着。今日の行動9時間25分。まずはビールで乾杯、美味し〜い。その後の温泉の気持ち良かった事。夕食の時は無事例会が終了した事を感謝して又カンパーイ。
コースタイム
朝日小屋5:40〜6:45朝日岳〜7;15吹上のコル7:55〜8:50青ザク9:00〜9:20五輪高原9:40〜10:45白高地沢11:20〜13:00瀬戸川〜13:45兵馬の平〜15:05蓮華温泉
北アルプスで出会った花々たち
タカネシオガマ |
シナノキンバイ |
タカネナデシコ |
スシトリスミレ |
タカネバラ |
キンコウカ |
ハクサントリカブト |
クルマユリ |
コマクサ |
コバイケイソウの群落 |
ミヤマアケボノソウ |
タカネマツユキソウ |
キヌガサソウ |
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