第1397例会 毛勝三山

三田 徹

2005年の正月の大山敗退後、来年(2006年)の5月はどこに行こうかという話になり、「日本雪山ルート集」にも掲載されている、これまで行ったことのない山域である毛勝三山が頭に浮かんだ。
 年明けて、今年の正月の大山リベンジ成功後、具体的に計画を練り始める。ルート集にある、片貝〜僧ヶ岳〜毛勝三山〜猫又谷〜片貝は山中3泊の行程である。
中でも僧ヶ岳からウドの頭を越え毛勝山までの尾根筋は何ヶ所かアップザイレンが必要で、技術・体力ともに手強そうであった。自分の休暇とカレンダーを睨みつつ日程的に大丈夫かどうか思案する。
 当初のメンバーは吉村さん、下さん、窪田君、橋口君、私の5人であったが、下さんが都合で抜け、窪田君は4月のボッカトレで負傷し無念のリタイア。
残るメンバーは3人となったため、結局、片貝〜毛勝山西北尾根〜毛勝三山〜片貝の山中2泊のルートに変更、最終的に下さんが復帰し、4人での春山合宿となる。
 ホームページで現地の情報を収集すると、例年5月の連休時期は片貝第4発電所を過ぎた成谷堰堤付近まで車が入るのだが、今年は積雪が多く、第2発電所で通行止めとのこと。
林道歩きのアルバイトを強いられそうで先が思いやられる。今年の天候は不安定で、4月下旬になっても北陸地方は降雪があったため、念のためワカンを個人装備に追加する。

 5/1(月)13:05 三田邸発。途中、運転を交代しながら4回休憩、富山県に入る頃から雷雨となり、翌5/2(火)0:50に魚津IC手前の有磯海SA着。当初は山の近くまで行く予定だったが、SAにはトイレ、軽食コーナー等何でも揃っており、かつ、車をデポする片貝第2発電所までのアプローチも近いことから、ここで軽く飲んで仮眠する。
 当初4時出発の予定だったが、相変わらず強い雨が降っており、ぐずぐずしてしまう。結局、5時半過ぎにSAを出発、第2発電所に車をデポし、雨が小降りになるのを待って歩き始める。
折からの大雨で、片貝川は暴れ川と化している。片貝山荘手前では先行していた泉州山岳会5人パーティが何やら相談、彼らは毛勝谷からアプローチする予定だったが、あまりの濁流に危険と判断し、我々にルートを確認しに来た。結局、我々と同じ西北尾根からのアプローチへ変更した。

片貝山荘
 アイゼンを着け、いきなり片貝川の激流に雪崩込んでいるデブリのトラバースとなる。遠くから見るといやらしかったが歩いてみればそうでもなかった。
 僧ヶ岳東又登山口にある遭難レリーフを過ぎ、小橋を渡り西北尾根に取り付く。
泉州山岳会のトレースを辿っていたが、突然、いくつもの雪のブロックが音を立てて落ちてきたので、より尾根筋に近いルートから登ることとする。これがものすごい急登で、今回の山行中一番きつかった。
 ようやく西北尾根の稜線に出ると、ところどころテープもあり、ルートもしっかりしている。アイゼンをはずしたり、着けたりしながら登る。
当初は標高2000m付近で幕営の予定だったが、出発が遅れたこともあり、1600m付近にテン場を決める。
この間ずっといやらしい雨が降っていたが、テント設営も終わる頃ようやく雨もあがり、雲間から山肌が見えてきてほっとする。天気予報では明日からの晴天は約束されている。
 早速、夕食。今回は、山中2泊となった分、荷物が軽くなり、その分がビール、日本酒、焼酎、隠し玉のつまみに化け、豪華な第1日目の夕餉となる。
水作りには、5月の汚れた雪用に持ってきたコーヒーフィルターが役に立つ。

 5/3(水) 目覚まし時計のアラームに気づかず、起床が30分遅れる。朝食は、昨日の夕食時に炊いていたアルファ米に昨日の残りの野菜スープをぶっかけたおじや。飯を炊かないでいい分、早く朝食が終わる。
 5:37 テン場発。快晴の中、アイゼンを効かせながら標高を稼ぐにつれ、右手に毛勝山南峰から伸びる大明神尾根が見える。左手には当初計画していた僧ヶ岳からの長い長い東北尾根と、西谷乗越から毛勝山への急登、通称「天国の階段」が迫ってくる。

毛勝の登り
 10:20 毛勝山(北峰)着。360度の大パノラマだ。山頂には単独行者が一人のみ。静かな山頂である。しばし、写真タイムの後、景色を楽しみながらの稜線漫歩。
毛勝山南峰、釜谷山頂を踏み、どんどん剣岳の勇姿が迫ってくる。
猫又山頂には13:50着。予定では東芦見尾根の大猫山付近まで足を伸ばして幕営するつもりだったが、あまりのロケーションの良さに今日の行動はここまでとし、テン場を猫又山頂直下に決める。
 テント設営では、雪鋸と2本のスコップが威力を発揮する。今回はダンロップ6人用テント、思ったより場所を食うので今日は広めにテン場を切ってブロックを積み、立派な「猫又帝国ホテル」が出来上がる。
時間も早く、微風快晴の中もったいないので、雪でテーブルを作り、絶景を堪能しながらビールで乾杯、隠し玉に舌鼓を打ち、我々だけの静かな時間を過ごす。

猫又帝国ホテルの宴

猫又帝国ホテル前で
 それにしても、ここからの眺めは最高である。これまでに縦走した後立山連峰、去年7月に窪田君と行った針ノ木岳、2003年正月合宿の剣岳早月尾根、吉村さん・下さんが青春時代を謳歌した左稜線、奥大日岳、大日岳、遠く白山、能登半島を望む。
今年は雪が多く、どの山も雪がべっとり付いている。テントに入り、第二段の宴でいい気分になり、シュラフに潜り込む。

 5/4(木)目覚ましどおりに起床。5:30過ぎに猫又谷下降点に着く。剣岳にまた来るぞ、と別れを告げ、谷を一気に下る。
この時間帯は雪も締まっており、快適なアイゼン歩行となる。途中から、シリセードの跡らしきものが延々と続いており、カッパを着けた下さんがこれを利用する。どうも、この堅い雪にしては幅も広く滑らかすぎる跡だと思っていたら、犯人は大きな雪のブロックが崩れて滑った跡だった。
 猫又谷を登って来るパーティは単独行も含め数パーティ、うち2パーティが山スキー、連休にしては入山者は少ない。

猫又谷を見る

 沢の音がだんだん近づき、地図を見ながら下る。下部では古いデブリ、新しいデブリがある。気温が上がっての通過はやばそうだ。
ようやく南又谷と東又谷の分岐に着く。ここを通った一昨日には雪で道路が埋まっていたが、この2日間の晴天ですっかり雪が融け、川の流れもずいぶんおとなしくなっている。
途中、川釣りを楽しむ人もいたが、ここまで入るのには相当歩かなければならないことを考えると、我々山好きと同じだなと思ったりする。
 分岐からは、いやな舗装道路歩きだが、途中、カタクリの花やショウジョウバカマ等の花々が目を楽しませてくれた。
第2発電所に着くと、出発するときは我々の車1台だったのが、連休の家族連れの車で埋まっていた。山から降りたら下界の人となり、魚津市内の金太郎温泉カルナの館で汗を流し、一路長崎を目指し、山行を終える。
 今回の山行は天候にも恵まれ、また、ルートを短縮したことにより春山入門コースとなった。
頑張れば1泊2日で行けるだろう。アイゼンワーク等それなりの訓練にはなったかなと思うが、荒れるとこんな訳には行かない
。ロングルートやバリエーションルートを目指し、さらにトレーニングに励んで行きたい。
 なお、今回の山行に当たり、勝山さんから過去の毛勝山域の山行記録、注意点などの貴重な情報の他、合宿費用の足しまで戴いた。本当に有り難うございました。

コースタイム
5/1 13:05 三田邸発
5/2 0:50 有磯海SA着、仮眠、5:40発
6:10 片貝第2発電所着、6:41発
8:15 片貝第4発電所着、8:27発
9:30 片貝山荘着、10:00発
10:20 西北尾根取り付き
15:00 テント設営(1605m地点)
20:00 就寝
5/3 3:34 起床
5:37 テン場発
10:20 毛勝山頂、10:51発
12:15 釜谷山頂、12:25発
13:50 猫又山頂
14:00 テン場着(テント設営15:00)
16:30迄 猫又帝国ホテル前テラスにて宴会
20:00 就寝
5/4 3:00 起床
5:10 テン場発
5:38 猫又谷下降点
10:30 南又谷と東又谷分岐
11:30 片貝第2発電所着
5/5 3:15 三田邸着
参加者 : 会員4名