第1363例会 北アルプス(長塀尾根〜蝶・常念・大天井・東鎌尾根)
窪田
今年のゴールデンウィークの北アルプス例会は、最終的に三田・窪田二名に決定。正月過ぎから暖めていた計画通り、欲張りながらまだ登頂していない蝶・常念を越えて東鎌を踏破する北アルプス南東部山域とした。
4月28日20時丁度に長崎インターを自家用車で出発、三田2回・窪田3回の運転で快適に飛ばし翌6時に飛騨清見インターを通過。中部縦貫道路も一部開通しているのと早朝の時間帯で通行量もほとんどなく7時過ぎには平湯に到着する。(道路事情が数年前と比べて格段によくなっている)
駐車場から上高地直通のバスに乗り、8時半頃上高地バスターミナルに到着。朝早いためか観光客も少ないが、これからのGWの人ごみを考えるとぞっとする。登山届を出して徳沢へ向け出発。10時過ぎには徳沢園に到着し一息つく。徳沢園にはこれから登る人・広々とした広場でテントを張って和む人が結構いる。長塀尾根へは徳沢園の右手の標識からとなるが、あまり登る人がいないのか、物珍しそうな視線を感じる。
長塀尾根標識前にて |
蝶ヶ岳ヒュッテまでもう少し |
長塀尾根は林の中いきなりの急登。出だしは雪がついていないのがせめてもの救い。1900mを超えると傾斜が緩やかになり雪がどんどん増えてくる。ただひたすら登ること4時間、ここが頂上?というような尾根の一ピークに過ぎない長塀山を通過する。標高の低いところではそれほどでもなかったが、森林限界に近づくにつれ風がどんどん強くなる。妖精ノ池を抜け森林限界を飛び出すと、聞きしに勝る暴風が吹きまくっている。
耐風姿勢で風をやり過ごしヨロヨロしながら蝶ヶ岳ヒュッテに駆け込む。テン場はあるが風が強くて吹き飛ばされそうで、雪も折からの小雨でべっとりと湿っている。いきなり軟弱であるが素泊まりを決め込む。(樹林帯でテントを張ればと思ったがもう後の祭り。ヒュッテでのテント泊のパーティはいなかった。)そうと決まれば現金なものでビールを買ってとりあえず乾杯する。そして芋焼酎も♪(風は夜半過ぎまで吹きまくっていた。)
4月30日3時半に腕時計のアラームをセットしたがぜんぜん聞こえず三田に寝過ごしたと起こされる。小屋泊まりなので支度は早い。約1時間で明るくなった小屋を出る。昨日とうって変わって快晴、日の出を拝む。えらく泊り客の出るのが早いなと思ったらご来光が目当てのようで、結局出立したのは我々二人のみだけだった。
早朝をいく |
北アルプス唯一の二重山稜(しげしげ見ていないのでよく判らず)である蝶ヶ岳を黙々と歩く。蝶ヶ岳の頂上はほぼ同じ高度で南北に長く、どこが山頂だかはっきりしない。数日前と思われる踏み跡を追いかけながらアイゼンをつけた足でガシガシ進むが、樹林帯で踏み跡がぷっつり消え、仕方がないので稜線を探しゴジラの茂みを進む。
7時過ぎ2512mピーク手前の原っぱで休憩を取ろうとすると、上空に妙な円盤状の物体が3個並んでいる。“UFOか?それとも超自然現象か??”と写真をパチパチ撮るが、よく見ると色がついていて、ゆっくりと北から南に向かって動いている。未知の物体と見えたそれは、なんと気球であった!山よりはるかに高い高度をゆっくりと飛んでいる。4個の気球が確認できた。
昨日の登りから息が荒くゼイゼイいいながら9時半過ぎピーカンの常念岳頂上に到着。360度視界を堪能する。東側の安曇野方面が開けており携帯の電波もすこぶる入りがよい。
常念から蝶〜槍
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〜大天井パノラマ
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常念を一気に下る |
大天井岳に向かって |
もったいないほどの常念岳の斜面を一気に約400m下り、常念小屋に11:44到着。
途中、大天井からやってくる登山者と情報交換をするが、昨日の暴風でせっかく設営したテントを畳んで小屋に避難したとのこと。おそるべし蝶・常念稜線である。
また、すれ違う登山者から速いですねえと言われるが、こちらピッチがあがらずだらだら歩いているので実感がない。
再び、腐った雪の中・雪解けの水溜りの中、大天井までの高度400mをゼイゼイいいながら登り返し15時半前大天荘に到着。
大天荘は開業しておらず、先着のオッサンがやっと人が来たよというぐらい人がいない。かなりの人数の登山者とすれ違ったが、皆小屋泊まりと見える。
時間が早いのでホットウイスキーを胃に流し込む。アルコールが手足の末端まで染み込んで行く。
我々は真っ暗な冬季小屋はごめんなので、冬季小屋すぐ横の雪を切って風除けブロックを積みテントを設営する。
夜は再びホットウイスキーと焼酎で酒盛りである。ラジオの天気予報に耳を傾けると、明日は曇りのち夕刻遅くから雨になるとの予報である。
ここまで来たし明日は予定通り東鎌に突入することにする。
大天井テント設営 |
大天井岳頂上 |
大天井〜槍全景 |
どんどん近づく東鎌 |
5月1日、今日はいよいよ東鎌に突っ込む。朝焼けが妙に綺麗で天気が崩れる感じがする。
夏道の喜作新道は雪で埋もれて雪崩れる危険性があるので通れない。大天井岳西側のすっぱり切れた稜線をぐんぐん下って大天井ヒュッテに到着、小休止する。
昨日のものと思われる比較的新しい踏み跡がついており先行パーティがいるから大丈夫だろうなと三田と顔を見合わせる。
2766mのピークを過ぎて稜線通しでしばらく進むと、先行しているはずの足跡が地団太を踏んだように固まっており、それから先の足跡が途切れている。先行していた足跡が、腐りかけの雪につけられている所から見て、日が高い時間に東鎌に突っ込んでいたのは感じていたが、おそらく時間的に断念し引き返したのだろうと思われた。(長崎に帰ってから考えてみると貧乏沢の頂部だったようで、北鎌に行くために下ったのだろう。)
所々夏道が出ていてそれを辿りながら最初の難所と考えていた赤岩岳に近づいていく。赤岩岳東斜面は雪がたっぷりついていて稜線直下の雪面に今にも雪崩れそうな亀裂が至る所に入っている。ロープを出し、極力岩稜通しで通過を試みる。
4ピッチ進んだところで約10時半、赤岩岳と思われるピークで進退について三田と協議する。天気が崩れない時間中に東鎌を超えるのは無理と判断し、撤退を決意する。
再びもと来た道を大天井ヒュッテへと引き返す。14時頃から冷たいものが顔にかかり始め、大天井ヒュッテに着く頃には冷たい雨粒に変わり、ヒュッテの陰に急いでテントを設営する。
テント設営後からは本格的な雨と風になり、テントマットは一変ビーチマットとなった。一晩中雨風が強くウトウトするのがやっとで、どこでも眠れる自信のあった僕でさえ寝付けなかった。ラジオから聞こえる天気予報の「明日は曇りのち晴れ」という天気を信じるしかなかった。
5月2日寝付けないまま2時半起床。雨は止んで少し強い風が吹くだけとなり、ワンパターンの朝食をかき込む。4時過ぎにずぶ濡れでチャプチャプ音のするテントを撤収開始。
昨日、小屋横の陰で良かれと思ってテントを張ったが、どうも風の通り道にテントを張ってしまったようだ。もう少し上に張れば少しはましだったのにと反省する。
ガスの中、ヒュッテから大天井岳まで約300mを登り返す。呼吸が苦しく全然ピッチが上がらない。
6時半、二度目の大天井頂上を踏む。これからはエスケープルートとして計画した燕山荘・合戦尾根に向けて歩を進める。大天井から切通岩までの斜面で雷鳥のつがいを3組見る。
為右衛門吊岩付近・蛙岩付近で数度道を間違え無駄な体力を消耗する。(どうも燕方面から来ると踏み跡が判りやすいが、大天井からの逆ルートだと尾根道に上がってしまいやすいようである。)
11時前、燕山荘到着。この頃にはすっかりガスも晴れ、遠く東鎌尾根が見えるピーカンの天気となった。
11:15燕山荘を出発、合戦尾根を下るべく燕岳に向け出発したが、すぐ見えるはずの合戦尾根が見えない。おかしいと小屋へ戻って聞きなおすと、積雪期は小屋の裏手から下るとのことであった。以前登ったときの記憶を当てにしていたためのうっかりミスであった。また反省材料が増えた。
合戦小屋までゴジラだらけの合戦尾根をバリバリ下って、途中第二ベンチで携帯を使ってタクシーを予約、14時15分に中房温泉へ到着した。
東鎌は残念ながら縦走できなかったが、今回の縦走を無事終えることができた。
今回欲張りすぎたが思い出残る山行となった。東鎌に向かうにはオーソドックスに燕から来る方が時間的・体力的にベターである。機会があれば東鎌に再チャレンジしたい。
※あとがき
山から下りればただの人・・・そのままタクシーで新島々(¥11000)まで乗りつけ、バスで中の湯まで。中の湯からは平湯まで空荷で戻る宝タクシーに一人500円で乗っけてもらい、観光案内所で旅館アルプス(http://www.hirayu-alps.co.jp)を予約。温泉につかり今時珍しい部屋食の豪華な夕食・ビールに舌鼓を打ちました。山・温泉・ビール・うまい料理・・・へへへっ、やめられませんねぇ♪♪
コースタイム:
4/28(晴) 20:00長崎IC発
4/29(曇、暴風) 6:00飛騨清見IC→平湯あかんだな村営駐車場→7:50駐車場発→8:28上高地バスターミナル・8:38上高地発→9:20明神9:30→10:12徳沢園10:25→11:10休(1860m)11:25→12:10休(2070m)12:20→13:03休(2320m)13:15→14:00休(2525m)14:10→14:25長塀山(通過、目立った標識なし)→15:00休(妖精ノ池2605m)15:10→15:35蝶ヶ岳ヒュッテ着。小屋素泊(¥6000)。19:45就寝。<晩飯>牛丼、ツナサラダ
4/30(晴)3:36起床。4:50小屋発→4:52蝶ヶ岳(瞑想ノ丘)→5:58休(2462m)6:10→7:10休(2450m,2512P手前)7:25→8:37休(2630m)8:53→9:36常念山頂9:55→10:44常念小屋11:00→12:00休(2630m)12:15→13:00休(2650mコル)13:15→13:53休(東天井岳)14:05→14:59休15:10→15:25大天井岳着。19:48就寝。<晩飯>中華丼、ハムサラダ
5/1(曇のち暴風雨)2:40起床。4:50大天井小屋→5:00大天井岳5:12→5:52大天井ヒュッテ6:00→6:47休(2587m)6:55→7:46休7:55→8:47休8:55→10:17撤退決定→11:28休11:40→12:20休(ビックリ平)12:30→13:35休13:40→14:45大天井ヒュッテ着。テント設営。<晩飯>カレー
5/2(ガスのち晴)2:30起床。5:00大天井ヒュッテ→6:10休6:17→6:32大天井岳6:40→7:16切通岩(喜作レリーフ)7:25→8:17休8:25→9:15大下りの頭9:20→10:7蛙岩10:12→10:52燕山荘11:45→12:25合戦小屋12:40→13:40休(第二ベンチ、携帯でタクシーを14:30に予約)13:45→14:25中房温泉。タクシーで新島々へ。